翻訳|Khoisan
アフリカ最古の民族のひとつといわれ,かつては南部アフリカ一帯に広く分布していたが,バントゥー人の南下とヨーロッパ人の入植により,現在ではボツワナのカラハリ砂漠,ナミビア,アンゴラ南部に住むサンとコイ・コインの言語,および東アフリカのタンザニアで言語孤島をなすサンダウェ語Sandawe,ハッツァ語Hatsa(ハザッピイ語,キンデガ語ともいう)からなる一語族。話し手の数はコイ・コイン語が2万~3万人,サン語が5万人内外,サンダウェ語,ハッツァ語が合わせて1万人内外といわれている。
コイサン語族の特徴はクリックclick音(吸着音,舌打音)の存在である。クリック音は声道中の軟口蓋と奥舌による閉鎖とその前方の閉鎖の二つによってつくられる室(しつ)を舌の調節により拡大し,室の空気圧を低下させることによる外気の室への流入によって生ずる鋭い破擦音(クリック,インフラックスinflux)と,この前方の閉鎖以外の調音と呼気によって生じクリックに直続して起こる音(クリック・アカンパニメントclick accompaniment,エフラックスefflux)より成る。前方の閉鎖の調音と室の破裂する場所により,クリック(インフラックス)は[◎](両唇),[/](歯茎・舌端),[≠](歯茎・舌端前舌),[](硬口蓋・前舌),[!](歯茎硬口蓋・前舌)の5種に分類される。破裂は[]の場合に中舌側面,他のものは舌中心線で起こる。サン語の南部グループの方言は上記の5種すべて,北・中部グループの方言およびコイ・コイン語,ハッツァ語では[◎]を除く4種,サンダウェ語では[◎],[≠]を除く3種がある。おのおののクリックはクリック・アカンパニメント(エフラックス)の有声,無声,鼻音化,声門破裂音,喉頭化音(エジェクティブejective),帯気などにより,さらに弁別される。なお,サンダウェ語,ハッツァ語はコイ・コイン語,サン語にくらべクリックの使用頻度は低い。
執筆者:加賀谷 良平
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…いずれも狩猟採集生活者である。サンは隣接する牧畜民コイ・コインとともにカラハリ砂漠に住み,言語的に吸打音(クリック)という舌打ち音をもったコイサン語族として扱われているが,人種的には身長151~157cm,皮膚は黄色,髪は黒く,顔は扁平で,目がつりあがり,頭型は中頭(頭指数75~77),やせた体つきで,女性は臀部に脂肪の塊をもつ脂臀(しでん)(ステアトピジー)の形質を遺伝している。彼らをコイサン人種と呼ぶこともある。…
…このグループにはズールー語のほか,コサXhosa語,スワジSwazi語が属する。ズールー語の特徴は,他のバントゥー諸語の一般的特徴に加え,コイサン語族ではないにもかかわらず,3種のクリック(吸着音,舌打音),[/],[//],[!]をもつことである。これはバントゥー人が南部アフリカへ南下した当時,この地域全域で話されていたコイサン語族に属するコイ・コイン語,サン語からの借用といわれている。…
※「コイサン語族」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
一粒の種子をまけば万倍になって実るという意味から,種まき,貸付け,仕入れ,投資などを行えば利益が多いとされる日。正月は丑(うし),午(うま)の日,2月は寅(とら),酉(とり)の日というように月によって...
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
7/22 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
6/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
5/20 小学館の図鑑NEO[新版]昆虫を追加