サソリモドキ(その他表記)whip-scorpion

改訂新版 世界大百科事典 「サソリモドキ」の意味・わかりやすい解説

サソリモドキ
whip-scorpion

蛛形(ちゆけい)綱サソリモドキ目Thelyphonidaに属する節足動物の総称。おもに熱帯地方に分布するが,日本でも九州,南西諸島にアマミサソリモドキTypopeltis stimpsoniiが,八重山諸島タイワンサソリモドキT.cruciferが生息している。外形は一見サソリに似ているが,類縁関係は薄く,人間に害を与えることはない。体長25~65mmで,前体部は堅い背甲に覆われ,8~12個の単眼をもつ。太い触肢にはいくつかの突起があり,獲物をとらえる武器となる。第1歩脚は歩行時の触覚器官として働く。腹部後端に多数の小さい環節からなる細い鞭状部をもつ。肛門腺からギ酸・酢酸臭のする液を射出して自己を守る。夜行性で,昼は石や朽木の下などに潜んでおり,夜になると近くにきた昆虫などを捕食する。求愛ダンスを行い,雄が精包を生殖口から出し地面に固定すると,雌はそれを生殖板でひっかけて精子を生殖器内に納める。世界中の熱帯,亜熱帯から約80種が知られている。化石は古生代石炭紀からでているが,現生種と基本的な構造は同じで,蛛形類中,もっとも変化していないものの一つといわれている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「サソリモドキ」の意味・わかりやすい解説

サソリモドキ
さそりもどき / 尾蠍
whipscorpion

節足動物門クモ形綱サソリモドキ目Thelyphonidaに属する動物の総称。世界に約75種を産し、最大種は北アメリカのマスチゴプロクツス・ギガンテウスMastigoproctus giganteusで、体長75ミリメートル。形態、生態ともサソリに似るのでこの名がある。前体はサソリ同様背甲板に覆われ、幅広く長方形。後体(胴部)は12節で長卵形。後端3節は急に細く環状となり、末端は長く鞭(むち)状となる。夜行性で日中は石の下などに潜み、歩行性の昆虫類などを強大な触肢(しょくし)で捕食する。鞭状の尾部を直立することがあるが、サソリのように刺傷はせず、肛門(こうもん)部の嗅腺(きゅうせん)から酢酸臭の強い分泌液を噴出する。日本には2種を産す。英名を直訳して別名ムチサソリともいう。

 アマミサソリモドキTypopeltis stimpsoniは、九州南部、南西諸島に分布し、体長40ミリメートル内外。全体黒色、腹面は赤みを帯びる。タイワンサソリモドキT. cruciferは石垣島に産し、前種に似る。アマミサソリモドキの毒成分は酢酸78.3%、カプリル酸5.8%、水分15.9%である。

[服部畦作]

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百科事典マイペディア 「サソリモドキ」の意味・わかりやすい解説

サソリモドキ

節足動物蛛形(ちゅけい)綱サソリモドキ目の総称。ムチサソリとも。サソリモドキ目のものは世界に約70種,熱帯・亜熱帯に種類が多く,日本にはアマミサソリモドキとタイワンサソリモドキの2種がすむ。体長(鞭状部を含まず)4cm内外,色や形がサソリに似ているが,触肢の先端がはさみ状でない点や,腹部の後端に細長い鞭状部をもつ点などが異なる。6月下旬〜7月上旬に産卵し,卵塊を腹部腹面につけて保護する。天草以南の九州〜沖縄〜台湾に分布。腹部後端から強い酢酸臭のある液を出して敵を防ぐ。

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