古代ローマの農耕神。その名は〈種をまく者〉の意。ギリシアのクロノス(ゼウスの父神)と同一視された。神話では,ゼウスに王位を奪われた彼はイタリアに来住,ローマのカピトリヌスの丘に一市を建設して王となった。そして未開野蛮の民に農業とその他さまざまの有用の技を教えて,太古の黄金時代を築いたという。神殿はカピトリヌスの丘のふもと,フォルム・ロマヌムの西端にあり,伝承によれば,前497年に奉献された。ここにはローマの国庫が置かれたほか,法文や元老院決議が保管されるなど,政治的にもきわめて重要な神殿であった。またその祭儀はサトゥルナリアSaturnaliaと呼ばれ,12月17日から7日間,奴隷にも特別の自由が与えられて,楽しく陽気に祝われた。この祭りの間に人々はろうそくや小さな人形を贈物として交換したが,この風習はのちにキリスト教のクリスマスに受け継がれた。
執筆者:水谷 智洋
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ローマ神話で、農業の豊饒(ほうじょう)をつかさどる神。その名はエトルリア系と考えられており、ギリシア神話のクロノスと同一視されるが、クロノスのもつ残虐性はこの神には薄い。詩人ウェルギリウスによれば、ゼウスにオリンポスの王座を追われたクロノスが、サトゥルヌスとしてイタリアに来住し、カピトリウムの丘に一市サトゥルニアを築いたとされる。そして田野(でんや)の女神オプス(またはルア)をめとり、その子ピクスがローマ王家の祖となった。またサトゥルヌスは、イタリアに農耕技術を導入して、文明化を進めたとされ、その治世はイタリアの黄金時代とみなされている。神殿はカピトリウムの丘にあり、12月にはクリスマスの一起源かと思われるサトゥルナリア祭が催された。
[丹下和彦]
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…〈謝肉祭〉と邦訳される。カーニバルの起源は,現世を支配する社会機構からの解放と農神サトゥルヌスの黄金時代への回帰を実現する,ローマ時代の農神祭サトゥルナリアのような先キリスト教文化の農耕儀礼にたどることができる。季節の循環と神話を豊饒儀礼として祭式化したサトゥルナリアの精神は,中世,ルネサンス期のヨーロッパ民衆文化に受け継がれ,復活祭(イースター)の40日前から,荒野で修行したキリストをしのんで,おもに獣肉を断ち懺悔を行う四旬節が始まるが,それに先立つ3~7日間,飽食と笑いの祝祭として,教会暦のなかに非公式的に定着した。…
…そしてゼウスの成長後,彼はガイアの薬で子らを吐き出させられたあげく,ゼウス兄弟に戦いを挑まれ,敗れてタルタロスに幽閉されたという。別な伝承によれば,彼は人類にさまざまの幸をもたらした黄金時代の王とされ,ローマ人にサトゥルヌスと同一視された。たぶんギリシア先住民族の神であったと考えられる。…
…最大の衛星チタンは窒素からなる大量の大気をもつ。【田中 済】
[シンボリズム]
土星はローマ神話のサトゥルヌス(英語ではサターンSaturn)と同一視され,図像学的には,通常長い鎌をもった老人の姿で表される。ギリシア神話のクロノスと同一視されることもあり,老年,時,さらには死と結びつけられることが多いのは,古代神話の最長老であるところから,あるいは神名のクロノスKronosと,〈時〉を表すギリシア語クロノスchronosとが混同されたことによるとされる。…
※「サトゥルヌス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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