シチメンチョウ(英語表記)turkey
Meleagris gallopavo

改訂新版 世界大百科事典 「シチメンチョウ」の意味・わかりやすい解説

シチメンチョウ (七面鳥)
turkey
Meleagris gallopavo

キジ目キジ科。アメリカに野生するヤセイシチメンチョウをメキシコインディアン家禽かきん)化した肉用の家禽。頭部から頸部にかけて皮膚が裸出し,興奮するとこの部分の色彩が赤,青などに変化するのでこの名がある。スペイン人の手により16世紀の初頭にヨーロッパへもたらされた。英名ターキー(〈トルコの〉の意)と呼ぶのは,それ以前にアフリカからトルコ経由でヨーロッパへ渡来したホロホロチョウと混同されたためといわれている。アメリカにはヨーロッパから逆輸入されて改良が進められた。本種の肉は他の食肉に比べタンパク質が高く脂肪,水分の含量が少ない。古くからクリスマス,感謝祭の食卓に欠かせぬものであったが,近年その高タンパク低カロリーの食肉という特性が評価され,アメリカではハムその他の加工品にも用いられるようになった。

 おもな品種には次のようなものがある。(1)ブロンズ種Bronze 野生種と同じ金属光沢のある羽色をもつ。成体重は雄17kg,雌10kgと大型で,おもに加工用に用いられ,26週齢の雄12~14kg,雌8kgぐらいのときに出荷される。(2)ラージ・ホワイト種Large White 羽色は白色。ブロンズ種の突然変異で生まれた白色個体から作られた。白色オランダ種も改良に用いられている。成体重は雄17kg,雌10kg。(3)白色オランダ種White Holland 羽色は白色,成体重は雄15kg,雌8kgぐらい。(4)ベルツビル・スモール・ホワイト種Beltsville Small White 1941年アメリカ農務省ベルツビル研究所で作出された白色の小型種。体重は雄10kg,雌6kg。家庭用のローストまたはフライに適する大きさの3~5kg(14~17週齢)で出荷される。(5)その他 ナラガンセット種Narragansett,ブルボン・レッド種Bourbon Redなどがある。
執筆者: 野生のものは,19世紀初めまではカナダ南部,アメリカおよびメキシコに広く分布し,とくにアメリカの東部と中部ではいたるところにいたが,大量の捕獲森林の伐採のために減少し,現在はアメリカ南部とメキシコのごく一部に生息しているだけである。雄は全長約1.2m,羽毛は暗褐色で強い金属光沢を帯びる。雌は金属光沢が少なく,雄よりかなり小さい。繁殖期以外は雄と雌はそれぞれ別の群れをつくり,昼間は地上で餌をあさり,夜は木にとまって寝る。植物質のものを主食とし,とくにどんぐり類を好むが,昆虫やカエルも食べる。放浪癖があり,ときどき大きな群れで餌の豊富なところに移動する。繁殖期には雌はひとりで地上に巣をつくる。雄は尾羽を扇状に広げて求愛のディスプレーを行い,ふつう数羽の雌と交尾する。卵の数は通常8~15である。抱卵や雛の世話も雌が行う。なお近縁のヒョウモンシチメンチョウは中央アメリカの開けた森林にすむ。
執筆者:

肉はやや繊細な味わいに欠けるが,味,肉色ともに鶏肉に似て調理もほぼこれに準じる。ロースト,冷製,蒸し煮とする。前胸部に栗,レーズン,鶏肝臓,パン粉などをまぜた詰物をし,首皮で包んでローストすることもある。胸肉を薄切りして焼汁とクランベリーソースを添える。腿肉はかたいので料理の格式としては下がり,手羽肉とともに刻んでコロッケにしたりする。肝臓,砂肝など内臓も鶏と同様に扱う。
執筆者:


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百科事典マイペディア 「シチメンチョウ」の意味・わかりやすい解説

シチメンチョウ(七面鳥)【シチメンチョウ】

キジ目キジ科の鳥。北米原産で野生種は草原や林にすみ,翼長50cmほど。アメリカで家禽化され,16世紀にヨーロッパへもたらされた。肉用家禽として欧米では広く飼育され,ことに収穫祭やクリスマスの料理などによく用いられる。成熟したものでは10〜15kgに達する。頭部には肉瘤(にくりゅう)が,頸(けい)部には肉垂が発達し,これらが鮮紅〜白色に変化する(七面鳥の名はこれに由来)。雌は肉瘤や肉垂をもたず,体も小さい。羽色は品種によって異なり,ブロンズ種(シチメンチョウ中最大),ラージ・ホワイト種,ナラガンセット種などがある。野生のものは減少し,今日ではアメリカの南部とメキシコに生息する。

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栄養・生化学辞典 「シチメンチョウ」の解説

シチメンチョウ

 [Meleagris gallopavo].アメリカ大陸に原生していた鳥類の一つ.家禽化されて生産されている.

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世界大百科事典(旧版)内のシチメンチョウの言及

【家禽】より

…おもな家禽とその祖先である野生種は次のとおりである。 (1)キジ科 ニワトリ(セキショクヤケイなどをインドで約5000年前に馴化(じゆんか)),ウズラ(野生のウズラを日本で江戸時代に馴化),シチメンチョウ(ヤセイシチメンチョウを北アメリカで原住民が馴化し,16世紀にヨーロッパへ紹介),ホロホロチョウ(野生のホロホロチョウを西アフリカで馴化)。(2)ガンカモ科 アヒル(マガモを北半球の各地で馴化),ガチョウ(サカツラガンを中国で,ハイイロガンをエジプトで馴化,ヨーロッパで改良),バリケン(ノバリケンをペルーで馴化)。…

※「シチメンチョウ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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