翻訳|scintigram
核医学検査におけるRI画像をいい(RIは放射性同位体,ラジオアイソトープの略称),放射性医薬品を患者に投与後,体内から出る放射線(おもにγ線)の体内分布状態や変化量を測定し,画像として表現したもの。このシンチグラムによって,各種臓器,または腫瘍の位置,大きさ,形などがわかり,RI集積の時間的推移からは身体の機能を知ることができる。従来シンチスキャンscintiscanとも呼ばれていた。これは,測定装置としてシンチスキャナーを用いていたことによる。しかし,今日では大部分がシンチカメラによって画像を得ていることから,シンチグラムという。これら検査法をシンチグラム検査,シンチグラフィーscintigraphy,RIイメージングRI-imagingと呼ぶ。また,患者に放射性医薬品を投与して体外から計測する検査法を総称してインビボin vivo検査という。これに対して,患者から採取した試料(血液,尿など)に放射性医薬品を加えて試験管等で検査する方法はインビトロin vitro法と総称されている。
汎用装置としては,シンチスキャナー,シンチカメラがあり,その他にも種々の装置が開発されている。(1)シンチスキャナーscintiscanner 最初のシンチスキャナーはアメリカのカッセンB.Cassenらによって考案された(1951)。検出部にシンチレーションカウンターを用い,患者体表面上の二次元的走査scanをすることからシンチスキャナーと呼ばれる。撮像に要する時間は長いが,実物大の画像が得られる。(2)シンチカメラscinticamera 体内からのγ線を検出することから,ガンマカメラともいう。アメリカのアンガーH.O.Angerによって原型が作られ(1956),その後,放射性医薬品の急速な開発と相まって核医学の主力機器となった。シンチスキャナーと異なり検出器部に大きなシンチレーター(蛍光体)と多くの光電子増倍管を配し,検出器部を移動させることなく短時間に大視野の画像が得られる。このために患者の苦痛が少なく,動態機能の検査も可能となる。また短半減期核種の使用が可能なため,被曝(ひばく)線量も少ない。さらに,コンピューターとの組合せも早くから行われ,画像処理,ROI(region of interestの略,関心領域)処理,動態機能解析処理(心臓の容積変化,脳血流変化,肺機能検査等)などがなされている。(3)その他の撮像装置 体内のRI分布は三次元的であるので,とくに体内のある深さのみの画像を得るためには〈断層イメージング〉が用いられ,X線CTと同様な原理とコンピューターによる像の再構成をするECT(emission CT)装置もある。とくに最近は,陽電子消滅時のγ線を検出するポジトロンスキャンpositron scanの研究も進められている。
現在臨床的に最も多く利用されているRIは,テクネチウム99m99mTc製剤であり,次いでガリウム6767Ga化合物の製剤がよく使用されている。そのほかに,キセノン133133Xe,ヨウ素131131I,タリウム201201Tl,ヨウ素123123Iなど多くの種類がある。99mTcは臓器親和性のRIとして多くの化合物があり,〈骨シンチグラフィー〉〈肝シンチグラフィー〉をはじめ,ほとんどの臓器に用いられている。これは,99mTcのもつγ線のエネルギーは約140keVであり,現在多く用いられているシンチカメラでの検出効率がよく,半減期も約6時間と短い,しかもβ線を放出しないため,患者の被曝が軽減されること,また種々の臓器に親和性をもつ標識化合物モリブデン9999Moの放射性壊変(99Mo→99mTc)を利用して病院内で容易に作りうるなどの理由による。67Gaのクエン酸塩は,201Tlの塩化物とともに〈腫瘍シンチグラフィー〉として悪性腫瘍の診断に不可欠のものとなっている。これは上記RI化合物が腫瘍に特異的に集積するという性質(腫瘍親和性)を利用したもので,シンチグラム上では,正常組織よりも高い放射能が測定され,陽性画像として描画される。これに対して,臓器親和性を示すRIを用いた場合は,正常組織内に局在する病変にはRIは取り込まれない。よってシンチグラム上では病変が欠損像(陰性像)として得られる。これらシンチグラムにおけるRIの投与は,静脈注射,経口投与,ガス化による吸入法といった簡単な方法によって行えるので,他の検査に比べ患者の負担も少ない。また人体に投与するRIは,半減期が短く,β線を放出しないものを多く用いたり,検査部位のみに集中する方法などにより人体内部の被曝軽減を図っている。
→核医学
執筆者:金場 敏憲+蜂屋 順一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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