標識化合物(読み)ヒョウシキカゴウブツ(英語表記)labelled compound

デジタル大辞泉 「標識化合物」の意味・読み・例文・類語

ひょうしき‐かごうぶつ〔ヘウシキクワガフブツ〕【標識化合物】

化合物中の特定原子を、その同位体置換して目印としたもの。同位体は放射性のものを用いることが多い。化学反応生体の代謝機構の研究利用

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改訂新版 世界大百科事典 「標識化合物」の意味・わかりやすい解説

標識化合物 (ひょうしきかごうぶつ)
labelled compound

放射線検出がきわめて感度高くまた正確に行うことができることを利用して,放射性同位体トレーサーとして使うことがしばしば行われる。化学や生化学の分野で使われるトレーサーは,ある化合物中の決まった位置の原子がその放射性同位体で一部または全部置き換わっていることが必要であり,これを放射性同位体標識化合物という。重水素など安定同位体で置き換わった安定同位体標識化合物もあり,両者を合わせて標識化合物という。放射性同位体標識化合物は放射性同位体を含む不純物がごく微量でも含まれていると使用上支障をきたすことが多く,放射化学的に高純度であることが要求される。標識化合物の合成には,通常簡単で反応工程が少ない反応径路が選ばれ,なるべく最終の過程で放射性同位体を導入するのが好ましい。また,生成物は十分精製を繰り返す必要があるが,比放射能が高すぎると,放射線分解や生理活性の低下をもたらすことがある。

 化学的合成が困難な標識化合物を得る方法として,例えば14CO2気流中でクロレラを培養し,そのタンパク質を加水分解して14Cで標識したアミノ酸を得るなど,生合成を利用する場合もある。

 放射性同位体標識化合物は,自己の発する放射線によって保存中に分解して不純物を生成する可能性があり,使用時には注意が必要である。
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化学辞典 第2版 「標識化合物」の解説

標識化合物
ヒョウシキカゴウブツ
labeled compound

化合物を構成する元素の一部が,その放射性同位体あるいは安定同位体によって置き換えられた化合物をいう.同位体をトレーサーとして用いることにより,反応機構解明同位体効果測定あるいは定量分析(同位体希釈法)などに広く利用される.有機標識化合物あるいは無機標識化合物と区別してよばれることもあり,前者には 14C で標識された14CH3OHなど多くの有機化合物が,後者にはNa235SO3などがある.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「標識化合物」の意味・わかりやすい解説

標識化合物
ひょうしきかごうぶつ
label(l)ed compound

化学構造や化学反応機構、代謝機構などの研究のため、化合物中の特定の原子における同位体組成を天然のものとは変えて合成される化合物。ラベル付(つき)化合物ともいう。置換あるいは濃縮された同位体はトレーサーとよばれ、安定同位体のこともあり、放射性同位体のこともある。前者の場合には各種分光法、後者の場合は放射能測定によってトレーサーの挙動が観測される。

[岩本振武]

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