翻訳|Cinderella
昔話の女主人公の名。本来は口伝えの継子譚(ままこたん)だが、フランスではシャルル・ペローが『過ぎた昔の物語ならびに小話』(1697)のなかに『サンドリヨンまたは小さなガラスの靴』として再話している。継子が家のつらい仕事ばかりさせられ、台所の灰の上に座っているので、サンドリヨン(灰かぶり)とよばれる。王子が舞踏会を催すと、継母の実子たちは正装して出かける。継子も行きたくて泣いていると、名付け親である仙女が現れ、カボチャを杖(つえ)でたたいて馬車にし、二十日鼠(はつかねずみ)を馬に、太った鼠を御者に、トカゲを従僕に変身させ、継子の服も豪華なものに変えて、舞踏会に行かせる。そこでは王子に注目されて、ともに踊るが、夜中の12時前に帰宅して、元どおりの姿になる。翌日も美しい姿で行って踊るうち、12時の鐘が打ち始めたので急いで帰る。そのときガラスの靴の一方を置き忘れ、王子は、その靴に足のぴったりあう娘を妻に迎えるという。高貴な女性には靴があわず、嘲笑(ちょうしょう)のうちに継子が履くとぴったりあう。名付け親が現れ、服を杖でたたくとふたたび豪華な服になる。継子は王子の妻になる。ドイツではグリム兄弟が、その口伝え童話集のなかに『灰かぶり』Aschenputtelと題してドイツの類話を入れている。
この型の継子譚は世界的に分布があるので、変化も多い。継子の祭り見物を妨害するために、継母が継子に、灰の中から豆を選び出すなどの難題を課するが、いつも親切にしてもらっている動物たちがきて手伝ってくれるという話もある。また、実母の墓に生えた木から美しい着物などが与えられるという話もあり、これは、日本の御伽草子(おとぎぞうし)の『鉢かづき』のモチーフに通じる。シンデレラの発見は、王子のスープに入れた指輪によるということもある。スウェーデンのビルギッタ・ルートの研究によれば、この話はオリエント起源で、西と東に分かれて伝播(でんぱ)したものと考えられている。日本の昔話では「米福糠福(こめぶくぬかぶく)」がこの系統で、「姥皮(うばかわ)」も部分的には対応がみられる。
[小澤俊夫]
世界的に分布の広い継子話の女主人公の英語名。話の起源はオリエントと考えられている。フランスではシャルル・ペローが《昔々の物語ならびに教訓》(1697)に〈サンドリヨン〉の名で,口伝えの再話作品をのせ,ドイツでは《グリム童話集》21番に〈灰かぶり〉がある。口伝えの類話にも多様な変化と組合せがあるが,ほぼ次のような骨格をもつと考えられる。継娘が継母とその実子に虐待されるが,親切な動物が食物や贈物をくれる。実子がそれを知り,継母が動物を殺す。シンデレラがその死体を埋葬すると,墓に上等な服がおいてある。王子が祝宴を開くことになると,継母は難題を与えてシンデレラを行かせまいとする。動物たちの援助で難題を片づけ,墓の上等な服を着てシンデレラが祝宴に行くと,王子は美しさに打たれて娘をひきとめるが,2度までは逃げられ,3度目に娘の靴だけを手に入れる。王子はその靴に合う足の娘を探し,ついにシンデレラを発見して結婚する。この話は他の継子話,《一つ目,二つ目,三つ目》や《千びき皮》などと混じりあいながら多様な変化をして伝承されている。動物の墓は,しばしば実母の墓ともいわれ,そこに木が生えて美しい着物を出してくれるという。死霊が植物に化成するという古い宗教観念の反映と考えられる。日本の《米福糠福》もこの系統の話と考えられるし,《姥皮》もこの話の後半部分と関係がある。
執筆者:小澤 俊夫
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…一方,同じ時期に発表されたファリャの《恋は魔術師》(1915)と《三角帽子》(1919)は,民族的色彩の濃いバレエ音楽として知られる。さらに1930年代以降にもボーン・ウィリアムズの《ヨブ》(1930),プロコフィエフの《ロミオとジュリエット》(1936)と《シンデレラ》(1944)などがあり,バレエ音楽は20世紀音楽の主要なジャンルとして定着するにいたった。 日本では,1910年代後半から20年代初めにかけて山田耕筰が石井漠,小山内薫の協力を得て創作した舞踊詩(《青い焰》《マリア・マグダレーナ》《野人創造》)がある。…
…ミーラはその後の病気がちなプロコフィエフの生活を支えた。ソ連では,オペラ《セミョーン・コトコ》(1939),《修道院での結婚》《戦争と平和》《真実の人間の物語》,バレエ曲《シンデレラ》(1944),《石の花》(1949),映画音楽《アレクサンドル・ネフスキー》(1938)など大規模な劇作品が多い。そのほかにも,《第5~第7交響曲》《第6~第9ピアノ・ソナタ》などあらゆる分野に多くの作品を残した。…
…焼畑農耕では灰が有用な肥料となることから,生命の源と考えられたのであろう。なお,C.ペローの童話で知られるシンデレラCinderellaの名は,〈燃えさしの灰〉を意味するcinderに由来し,原義は〈灰かぶり姫〉である。灰に埋もれて働くこの主人公は,死と再生を暗示するとともに古い豊穣神が童話化された姿でもある。…
※「シンデレラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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