翻訳|scooter
二輪自動車の一型式。オートバイの一変型とみることもできる。オートバイはまたがって乗るので、スカートの女性やスーツ姿の男性、老人には乗りにくい。そこで、車輪の直径を小さくし、足をそろえて腰掛けて乗れるようにしたのがスクーターである。エンジンも、なかには80cc、125cc、250ccのものもあるが、日本で第1種原動機付自転車となる50cc以下のものが大半を占める。多くはVベルト式の無段自動変速機をもち、操縦は容易である。その形態、性能から長距離走行には不向きであり、もっぱら近距離の通勤、通学、買い物などに用いられている。運転免許を必要とする。
その歴史はほとんどオートバイと等しいほど古く、1921年にはイギリスのネラカーNeracar、ドイツのメゴラMegoraなど今日に近いものがつくられた。しかし本格的に普及したのは第二次世界大戦後のことで、経済の疲弊によって人々に自動車が所有できなかったうえに、軍需産業、とくに航空機産業が平和産業への転身を図ってつくり始めたためである。イタリア、旧西ドイツ、日本などにおける第一次スクーター・ブームは、自動車の普及によって1950年代末までにいったん収まったが、80年代に入って、主として日本で第二次ブームがおきている。今回の流行は乗用車に対する補助的な乗り物としてである。女性の使用が多いため、ソフトバイクとよばれることもある。
[高島鎮雄]
英語でスクーターscooterといった場合,本来は片足を台の上に乗せ,もう一方の足で地面をけって走る2輪の遊戯具のことであるが,現在ではエンジンによって駆動する二輪車,すなわちモータースクーターmotor scooterを指すのがふつうである。明確な定義はないが,日本では1953年に日本自動車工業会が中心となってまとめたものによると,〈原動機を座席の下に設け,前方に足踏台のある,車輪が22インチ以下の二輪自動車〉とされているが,オートバイと分類上の境界は明確ではなく,両者の中間的形態で判然としないモデルもある。ガソリンタンクがシート下や後部に設置されているため乗り降りが容易で,車体はカバーされているため着衣が汚れることも少ない。運転操作は,多く遠心式の自動クラッチやVベルトを用いた自動変速機が採用され,いたって簡単である。その起源について定説はないが,1935年アメリカ軍の落下傘部隊に折畳式のものが用いられたのが最初とされる。日本では,第2次世界大戦終了後の45年,それまでの軍用機メーカーが製造を始めてから普及,オートバイに押されて69年には製造は中止されたが,最近,簡便な交通手段として需要が高まり,再び生産されるようになった。
→オートバイ
執筆者:中谷 弘能
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