日本大百科全書(ニッポニカ) 「スズハモ」の意味・わかりやすい解説
スズハモ
すずはも / 鈴鱧
brown pike conger
common pike conger
[学] Muraenesox bagio
硬骨魚綱ウナギ目ハモ科に属する海水魚。北海道釧路(くしろ)以南の太平洋沿岸、山口県以南の日本海沿岸、東シナ海、朝鮮半島、南シナ海など西太平洋とインド洋に広く分布する。体は細長くて、後方に向かって側扁(そくへん)する。口は大きく、目の後縁下よりも後方まで開く。上顎(じょうがく)は下顎よりも突出する。歯は犬歯状。前上顎骨と鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)の歯は3列に並ぶ。中央列歯は肥大して三尖頭(さんせんとう)をなし、中央の尖頭は両側のものより著しく大きい。主上顎骨歯は3~4列に並ぶ。体は青褐色で、腹面は淡い。胸びれの内側は紅色。水深100メートル以浅の沿岸域の泥底に生息し、河口域でもみられる。夜行性で、底生魚、頭足類、甲殻類などを貪欲(どんよく)に食べる。東シナ海の浅海域では4~6月ごろに産卵する。レプトセファルス(葉形(ようけい)幼生)の体は細長くて、腸管は直線状。肛門(こうもん)は第74~81筋節にある。体側の正中線の下方に1列の黒色素胞(こくしきそほう)が並ぶ。雌は雄よりも成長がよい。全長は最大2メートルほどに達するが、普通は70センチメートルほどのものが多い。底引網、延縄(はえなわ)、流し網などで漁獲され、すし、てんぷら、蒲焼(かばや)き、練り製品などの材料にされる。近縁種のハモとは外見が著しく似ているが、スズハモは肛門より前の側線孔数が33~39、肛門より前の背びれ軟条数が47~59、脊椎(せきつい)骨数が128~141とハモに比べて少ないこと、および胸びれの内側が紅色であることで区別できる。しかし魚市場では両種を区別せずにハモとよぶことが多い。
[浅野博利・尼岡邦夫 2019年2月18日]