スフマート(英語表記)sfumato[イタリア]

精選版 日本国語大辞典 「スフマート」の意味・読み・例文・類語

スフマート

〘名〙 (sfumato) 物体輪郭を線ではっきり描かないで、周囲空間との境をぼかして描く絵画技法。空間における物体の存在を現実的に表現するための手法で、レオナルド=ダ=ビンチによって始められた。

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改訂新版 世界大百科事典 「スフマート」の意味・わかりやすい解説

スフマート
sfumato[イタリア]

〈空気に消えてゆく煙のように〉(レオナルド・ダ・ビンチ),画面の明るい部分からごく暗い部分まで,境界線なしに,徐々に変化する諧調をいう。〈煙〉を意味するイタリア語のフーモfumoに由来し,〈煙のかかった〉の意。L.B.アルベルティは《絵画論》において,輪郭(素描)が絵画の基本であるとしたが,これに対して,レオナルド・ダ・ビンチは,線によって把握できない諸現象の描写を絵画の本質と考えた。すなわち,スフマートの手法は,その本質に,空気遠近法によるアトモスフィアの描出と,色彩と光によって物体を認識する絵画的ビジョンを含んでおり,線描を基本とする構築的な古典主義に代わってバロック,あるいはロマン主義の絵画様式の端緒を開いた。バザーリは,スフマートの代表的作家として,レオナルド・ダ・ビンチのほかにジョルジョーネをあげているが,スペインのムリーリョモラーレスもその中に加えられる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スフマート」の意味・わかりやすい解説

スフマート
sfumato

絵画用語。「ぼかした」「蒸発した」という意のイタリア語。絵画技法で物体を包む空間の厚みを出すために画面輪郭線をぼかして描く法 (→キアーロスクーロ ) 。レオナルド・ダ・ビンチはこれを絵画芸術の本質の一つとみて重要視している。

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