スマートコミュニティ(読み)すまーとこみゅにてぃ(英語表記)smart community

日本大百科全書(ニッポニカ) 「スマートコミュニティ」の意味・わかりやすい解説

スマートコミュニティ
すまーとこみゅにてぃ
smart community

地域社会がエネルギーを消費するだけでなく、つくり、蓄え、賢く使うことを前提に、地域単位で統合的に管理する社会。産業や社会生活の基盤となる住宅、施設、交通網、公共サービスなどがIT(情報技術)を利用することで、エネルギーの最適な活用ができる次世代送配電網スマートグリッドを基礎とした情報ネットワークに接続し、環境負荷が少ない暮らし方を実現する。ここでいうスマートは賢いと訳され、「賢くエネルギーを使う」という意味で用いられている。スマートシティsmart city(環境配慮型都市)ともいう。ヨーロッパやアメリカでは、省エネルギーや循環型社会を指向する都市を意味することばとして、サステイナブルシティsustainable city(持続可能な都市)が浸透している。

 これまで地域社会で消費するエネルギーのうち、電力に関しては、供給量の予測と調整によって需給のバランスがとられてきた。これに対し、スマートコミュニティでは自家発電蓄電を含む再生可能エネルギーを最大限に利用し、従来の電力供給とあわせて需要量も供給量も管理する機能が必要になる。このエネルギー管理のシステムを実現するために中心的な役割を担うのが以下の4点である。(1)BEMS(ビルエネルギーマネジメントシステムbuilding energy management system)やHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム home energy management system)といった、電力の需給状態を把握する「可視化」のための技術。太陽光発電燃料電池などによる自家発電装置の発電量や消費電力量などの状態をモニターリアルタイムに確認することができる。(2)各家庭で発電した電力を消費量が増えるときまでためておく蓄電装置。家庭用蓄電池や電気自動車バッテリーを活用し、蓄電量はHEMSなどにより管理される。(3)地域全体のコントロールセンターで行われる統合的な需給バランスの管理。消費量や発電・蓄電量の把握にとどまらず、情報ネットワークと送配電網を組み合わせることで、電力が不足している地域へ備蓄されている所から融通したり、電力供給量が逼迫(ひっぱく)した場合、ビルや住宅を自動的に省エネルギー設定に切り替えたりすることができるようになる。(4)電力の状態に応じて地域の統合的な管理を可能にする、各家庭につけられる通信機能付きの電力計スマートメーター。なお、発電や蓄電装置を備え、スマートメーターによって需給バランスの管理ができる一般住宅をスマートハウスsmart houseという。

 アメリカのオバマ政権において、2009年に成立した景気回復・再投資法に基づき、45億ドルにのぼる予算がスマートグリッドやエネルギー周辺のIT関連技術に投じられ、普及や実証の研究が行われている。日本では、2009年(平成21)に次世代エネルギー・社会システム協議会が発足している。2010年より横浜市、愛知県豊田市、京都府・関西文化学術研究都市(けいはんな学研都市)、北九州市で、家庭用の太陽光発電や燃料電池の利用、製鉄会社での電力会社に頼らないコ・ジェネレーションco-generation(熱電併給)発電による自家発電運営、電力の供給量に応じて電気代を変動させて使用を抑える仕組みなど、さまざまな実証実験が行われている。経済産業省の呼びかけで2010年にスマートコミュニティ・アライアンス(Japan Smart Community Alliance:JSCA)が設立され、電気やガス、自動車、情報通信、電気機器、建設、商社、自治体、大学などの産官学合同による国際標準化技術の獲得や普及活動などが開始されている。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android