スマートグリッド(読み)すまーとぐりっど(英語表記)smart grid

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スマートグリッド」の意味・わかりやすい解説

スマートグリッド
smart grid

ネットワーク自体に電力通過供給を監視する手段が備わった,安定的な統合型電子制御システム。従来送電網と並行して電力供給に使用される。送電網とは,電線変圧器変電所,および需要家と発電所を結ぶ配電機器からなるネットワークである。発電所から需要家へ一方向に電力が供給される従来の「賢くない送電網」に対して,「賢い(スマートな)送電網」は,システム全体の効率性,安全性,信頼性を高めるセンサ,通信ネットワーク,制御システム,コンピュータなどを備えている。停電など不測の事態が起こると,回路を再構成することで影響を最小限に抑えることができる。また,電力会社が需給変動に応じて電力料金を変更したり,消費者が料金の変動に合わせて使用量を調整したりできるようになる。将来的には,風力発電太陽光発電を電力供給網に統合したり,プラグイン型電気自動車 PEVsの充電システムを接続したりすることも期待される。相互運用性はスマートグリッドの大きな強みの一つだが,攻撃を受けやすくなるという弱みもある。送電網に加わる構成要素が増えれば,攻撃の標的も増え,悪質なコードやシステム侵入,DoS攻撃などサイバーテロ脅威も急激に増大する。2015年12月には,サイバー攻撃原因とする大規模な停電がウクライナで発生し,22万5000人に影響が及んだ。これをきっかけに送電網の脆弱性が世界的な問題となり,スマートグリッドの本格的な展開導入を開始する前に,サイバー攻撃や物理的攻撃に対するセキュリティを確保する必要性が問われた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「スマートグリッド」の意味・わかりやすい解説

スマートグリッド
すまーとぐりっど
smart grid

従来からの集中型電源と送電系統との一体運用に加え、情報通信技術の活用により、太陽光発電などの分散型電源や需要家の情報を統合・活用した、高効率、高品質、高信頼度の電力供給システムの送配電網呼称次世代電力網ともよばれる。

 スマートグリッドという名称は、2005年にEU委員会が発表した技術開発計画に初めて用いられ、その後、アメリカのオバマ政権がグリーン・ニューディール政策の柱の一つとして位置づけたことで注目を集め、広く用いられるようになった。ただし、電力系統(グリッド)のあり方が各国の電気事業政策に応じて個別の発展を遂げてきたように、スマートグリッドの具体的な定義づけも各国や地域で異なっている。実際にスマートグリッドとよばれている電力網には、(1)再生可能エネルギー発電の電力供給網接続拡大への貢献、(2)電気自動車導入促進への貢献、(3)需要家側のIT技術を用いた電力量計(スマートメーター)の設置および活用、(4)送配電系統の近代化投資、のいずれかの要素が含まれている。しかし本質的には、スマートグリッドは、電力供給網(電力系統)システムを広くまたぐ概念であり、システム間の接続や連携が必須となる。このため、体系的な概念整理と取組みが重要とされる。

 日本では、太陽光発電の大規模な導入目標が策定されたことや、世界的にもスマートグリッドの普及拡大への動きが進展したことなどを受け、2009年(平成21)8月に資源エネルギー庁の研究会として「次世代送配電ネットワーク研究会」が設置された。次世代エネルギー・社会システム実証地域として、横浜市、愛知県豊田市、関西文化学術研究都市および北九州市の4地域で、スマートグリッドの実証研究が実施される。

[伊藤葉子]

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