セラ(Camilo José Cela)(読み)せら(英語表記)Camilo José Cela

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

セラ(Camilo José Cela)
せら
Camilo José Cela
(1916―2002)

スペインの小説家。ガリシア地方に生まれる。内戦終結後『パスクアル・ドゥアルテの家族』(1942)によって華々しく文壇にデビュー。死刑囚の告白の形式をとり、スペイン社会の腐敗を鋭く批判し、人間の存在価値を問う作品で、沈滞したスペイン文学をよみがえらせ、戦後文学の原点と目される。さらに、『ラサリーリョ・デ・トルメスの新しい遍歴』(1944)、スペイン戦後社会派小説の嚆矢(こうし)とされる『蜂(はち)の巣』(1951)、流麗なスペイン語を駆使した紀行文『ラ・アルカリアへの旅』(1948)などを発表し、文壇の第一人者の地位を固める。その後『1936年聖カミロの祝日』(1969)では、内戦直後のマドリードの混沌(こんとん)とした社会と人間像を描く。当代一流の文章家としても知られ、人間性への深い洞察力と持ち前の鋭い風刺性は、ピカレスク小説(悪漢小説)やケベトの作品などのスペイン文学の豊かな伝統を思わせる。晩年に入っても旺盛な創作意欲は衰えをみせず、『二人の死者のためのマズルカ』(1983)では、自伝的要素を織り込み、故郷ガリシアの辺鄙(へんぴ)な村を舞台に、対立する2部族間の争いを通して、暴力、セックス、死などに彩られた原初的な人間の生々しい生きざまを描き、さらには『キリスト対アリゾナ』(1988)、『聖アンドレスの十字架』(1994)を経て、最終作『ツゲの木』(1999)では、やはりガリシアを舞台に、大西洋に面した最西端の漁村を舞台に、藪(やぶ)医者、魔法使い、漁師、田舎司祭などが登場する、幻想と神秘に包まれた世界を現出している。ほかに『サッカーと11の寓話(ぐうわ)』(1963)、『愚者列伝』(1976)、『家族の思い出』(1999)などの作品がある。創作活動のほか、1956年文芸誌『アルマダンス亭草紙』Papeles de Son Armadansを創刊し、評論、随筆でも健筆を振るった。89年ノーベル文学賞受賞。スペイン王立アカデミー会員。

[東谷穎人]

『会田由・野々山真輝帆訳『蜂の巣』(1989・白水社)』『有本紀明訳『パスクアル・ドゥアルテの家族』(1989・講談社)』『有本紀明訳『ラ・アルカリアへの旅』(1991・講談社)』『有本紀明訳『ラサリーリョ・デ・トルメスの新しい遍歴』(1992・講談社)』『有本紀明訳『二人の死者のためのマズルカ』(1998・講談社)』『野谷文昭・星野智幸訳『サッカーと11の寓話』(1997・朝日新聞社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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