セーリング競技(読み)せーりんぐきょうぎ(英語表記)sailing competition

日本大百科全書(ニッポニカ) 「セーリング競技」の意味・わかりやすい解説

セーリング競技
せーりんぐきょうぎ
sailing competition

ヨットウィンドサーフィンカイトボードなど、帆(セールsailもしくはカイトkite)を備えた船艇または器具を用いて行う競技。セーリングとは、もともとの英語の意味は「帆走航海」であるが、スポーツとしては、技術やスピードを競う競技を意味する。

 セーリング競技には、バラスト・キールballast keelを有する大型ヨットのキールボートkeelboat(おおむね6メートル以上)、センターボードcenterboardを有する小型ヨットであるディンギー(おおむね5メートル以下)、ウィンドサーフィン、ラジオコントロール艇(無線操縦ヨット)、ランドセーリング(ランドヨッティングまたはサンドヨッティングともいう)、アイスヨット、カイトボードの競技が含まれる。競技は一般的にはスピードを競うものであるが、ウィンドサーフィンやカイトボードなど、技術の高さおよび多様さ(パフォーマンス)で採点される競技もある。

 バラスト・キールとは、艇を安定させるため船底に取り付ける重りであり、かつ横流れを防ぐ装備をいう。センターボードとは、艇の横流れを少なくするため、水中に出るように船底に設置された可動式の板のことである。2010年代以降の艇種にはバラスト・キールやセンターボードにかえて、水中翼(ハイドロフォイルhydrofoil)を取り付けたものもある。またランドセーリングとは、艇体に車輪をつけたランドヨットの帆が受ける風を利用して海岸など陸上を走ることをいい、競技ではその速さを競う。カイトボードとは、専用の凧(たこ)(カイト)とボードを用い、ボードに乗って凧が受ける風の操作などをしながら水上を滑走することをいい、競技では速さや技術を競う。

 なお、ワールドセーリングWorld Sailing(セーリング競技を統括する国際組織)の分類では、パラワールド(障害者を対象とする世界選手権大会)でも使用される全長4メートル余りの1人乗りヨット「2.4メートル」クラスや、さらに小さな1人乗りヨット「アクセス2.3」クラス(全長2.3メートル)も、バラスト・キールを有していることからキールボートの部類に含めている。

 「ヨット」とは、遊びに用いる快速艇(動力源がエンジンか帆かは問わない)のことを意味しており、アメリカズ・カップ(ヨット界最大の国際レース)で使用されているような大型の艇はまさに「セーリング・ヨット」の一つの例である。そして、1人乗り、2人乗りのディンギー(小型のボート)は正しくは「セーリング・ディンギー」といい、ヨットとは区別されていたが、一般的にはこれらも「ヨット」と称されている。しかし、オリンピック競技にウィンドサーフィンが導入(1984)されてからは、帆を使用して行うスポーツをすべて「セーリング・スポーツ」と称するようになった。またオリンピック、国民体育大会等の競技名も、かつては「ヨット競技」という言い方をしていたが、現在では「セーリング競技」という名称に変更している。これにあわせる形で、ヨット競技を統括している国際組織も、1996年にその名称を「国際ヨット競技連合」(International Yacht Racing Union:IYRU)から「国際セーリング連盟」(International Sailing Federation:ISAF)へと変更。さらに2015年、ISAFから現在の「ワールドセーリング」へと、再度その名称を変更した。

[柴沼克己 2019年4月16日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android