ゼルチュルナー(読み)ぜるちゅるなー(その他表記)Friedrich Wilhelm Adam Sertürner

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゼルチュルナー」の意味・わかりやすい解説

ゼルチュルナー
ぜるちゅるなー
Friedrich Wilhelm Adam Sertürner
(1783―1841)

ドイツの薬学者。モルヒネ発見者。ドイツのパデルボルンに生まれる。父はイタリアの技術者。16歳で町の薬局徒弟となり薬局実験室で薬の研究に従事成年に達し薬剤師となり、アヘンの神秘的成分の究明に集中した。26歳でアインベックの薬局主となり着実に研究を進める。1805年、麻酔性の強い塩基性物質を純粋な結晶として抽出したことを公表、その後、動物に次いで自ら人体実験を試み、有効成分であることを確かめ、眠りの神モルフュウスにちなみ「モルヒネ」と命名し、1817年論文を発表した。フランスのゲイ・リュサックは彼の業績を賞賛した。近代薬学の寵児(ちょうじ)となったアルカロイドの道はモルヒネ発見によって開かれた。

[根本曽代子]

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改訂新版 世界大百科事典 「ゼルチュルナー」の意味・わかりやすい解説

ゼルチュルナー
Friedrich Wilhelm Adam Sertürner
生没年:1783-1841

19世紀のドイツの薬剤師。ノインハウスに生まれ,15歳でパーデンボルンの薬剤師の徒弟となる。1820年,ハーメルンに薬局を開設した。薬局での仕事のかたわら,アヘンに含まれる〈睡眠物質〉の研究に従事し,1805年モルヒネの単離,抽出に成功した。彼はこの結果を05年,06年と2度にわたって発表したが,当時は世の注目を集めることとならず,17年の再出版でようやく認められることとなった。単離されたモルヒネは,結晶として取り出された初めての植物アルカロイドで,生薬学やアルカロイド化学の発展の基礎となった。その後,ストリキニーネカフェインなどの植物アルカロイドの研究も行った。一方火器にも興味をもち,元込銃や新合金による銃弾の研究も行った。後年,心気症に悩んだといわれる。
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世界大百科事典(旧版)内のゼルチュルナーの言及

【アルカロイド】より

… アルカロイド単離の第1号はモルヒネである。アヘンの有効成分の単離を志したドイツの薬剤師ゼルチュルナーF.W.A.Sertürner(1783‐1841)が,1803年に研究に着手し,3年後にその成功を報告した。この研究成果を重視したマイスネルが18年にアルカロイド(〈アルカリ様の〉の意)という総称を提唱したものである。…

【生薬】より

…毒物は大量で用いると危険であるが,少量では最善の薬となるとの考え方が基礎となっている。 19世紀初頭ゼルチュルナーF.A.W.Sertürner(1783‐1841)はアヘンから鎮痛作用のある塩基性物質を結晶として分類し,モルヒネと命名して以来,ヨーロッパ生薬および新しく薬局方に収載されていた強力な生理作用を有する各種の熱帯生薬から,生理活性のあるアルカロイドが発見された。ここにおいて薬用植物→生薬→エキス→有効成分の単離という一定の分析的方式が成立し,近代薬学の方向が決定した。…

【アルカロイド】より

… アルカロイド単離の第1号はモルヒネである。アヘンの有効成分の単離を志したドイツの薬剤師ゼルチュルナーF.W.A.Sertürner(1783‐1841)が,1803年に研究に着手し,3年後にその成功を報告した。この研究成果を重視したマイスネルが18年にアルカロイド(〈アルカリ様の〉の意)という総称を提唱したものである。…

【生薬】より

…毒物は大量で用いると危険であるが,少量では最善の薬となるとの考え方が基礎となっている。 19世紀初頭ゼルチュルナーF.A.W.Sertürner(1783‐1841)はアヘンから鎮痛作用のある塩基性物質を結晶として分類し,モルヒネと命名して以来,ヨーロッパ生薬および新しく薬局方に収載されていた強力な生理作用を有する各種の熱帯生薬から,生理活性のあるアルカロイドが発見された。ここにおいて薬用植物→生薬→エキス→有効成分の単離という一定の分析的方式が成立し,近代薬学の方向が決定した。…

【モルヒネ】より

…アヘンの主成分で,産地によって異なるがアヘンに9~14%含まれる。モルヒネは1805年ドイツの薬剤師F.W.A.ゼルチュルナーによって初めて分離され,1952年M.ゲーツらによって化学的に合成された。分子式C17H19NO3,分子量285.3のアルカロイドで,分解点254℃,[α]D25=-132゜の苦味をもつ無色結晶。…

【薬用植物】より

…それらの中で,薬効と関連するものを有効成分という。化学成分の研究は1803年F.ゼルチュルナーがアヘンからモルヒネを単離して以来,キナ皮からキニーネ,タバコからニコチン,吐根からエメチン,コカ葉からコカイン,さらにストリキニーネ,アトロピン,ヒヨスチアミン,エフェドリンといった重要な,生理活性の強いアルカロイドがいろいろな薬用植物から次々と単離された。さらに1837年J.F.リービヒとF.ウェーラーがアミグダリンを加水分解して糖を得たことから,配糖体が薬効成分として大きな位置を占めることが知られるようになった。…

※「ゼルチュルナー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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