日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハーメルン」の意味・わかりやすい解説
ハーメルン
はーめるん
Hameln
ドイツ北西部、ニーダーザクセン州の郡庁所在都市。人口5万8800(2000)。ハノーバー南西方約40キロメートル、ウェーザー川の河畔に位置する。中世の最重要軍事道路ヘルウェークが、ウェーザー山地中でウェーザー川を越える地点に発生し、1200年ごろから計画的に建設され、商業が栄えた。鉄道の交差点をなし、木材加工、食品、じゅうたん、陶器などの工業が行われる。
1284年、この町で130人の子供が行方不明になった。その原因については、ドイツの東方植民や少年十字軍に関連づけて説明されているがさだかではない。この事件が「ネズミ捕り(笛吹き)男」の伝説となり、グリムの童話やブラウニングの詩に取り上げられて、この町の名は世界中に知られるようになった。市内にはウェーザー・ルネサンス様式の「ネズミ捕り男の家」(1602~03建築)などが残り、6~9月の日曜正午にマルクト教会前で伝説にちなむ寸劇が演じられる。
[齋藤光格]
『阿部謹也著『ハーメルンの笛吹き男――伝説とその世界』(1974・平凡社)』