改訂新版 世界大百科事典 「ソコール」の意味・わかりやすい解説
ソコール
Sokol
チェコスロバキアにあった民族的体育運動。1862年,オーストリアに隷属していたチェコスロバキア民族のあいだに独立の意欲が高まっていたが,政治結社の自由が奪われていたので,指導者たちは青少年の体育運動を通じて民族意識の高揚を図ろうとし,全国的体育団体を結成して〈ソコール〉と名づけた。ソコールとはスラブ語でタカのことである。全国52地区に支部を置き,男女青少年に体操,集団舞踊,フェンシング,ボクシング,野外演劇などを指導奨励し,6年に1度ずつ,プラハの競技場で全国大会を開催,数万人の集団体操をおこなって大いに気勢をあげた。各国の集団体操(いわゆるマスゲーム)はソコール運動に範をとったものが多い。1918年チェコスロバキアは独立し,20年に盛大な記念大会をプラハで挙行,以後も運動は続けられていたが,39年ドイツ軍が進駐し第2次世界大戦となってソコールも解体した。戦後,1948年に一度ソコールの祭典が開催されたが,55年から行われるようになる全国体育大会では,ソコールという名ではなくソ連にならってスパルタキアードという名が用いられた。東欧諸国で大きな改革の動きが生じてきた89年の11月,チェコスロバキアでは〈ビロード革命〉によって体制転換がなされ,ソコール連盟も復活してその活動を再開した。その後,民族的・経済的問題などから93年1月にチェコとスロバキアの二つの国に分離したが,ソコールの活動は継続され,94年の7月にはチェコのプラハで両国ならびに周辺諸国のスラブ民族会員などの参加により,46年ぶりにソコールの祭典が開催されている。
執筆者:川本 信正+松本 芳明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報