タンパク繊維(読み)タンパクセンイ

化学辞典 第2版 「タンパク繊維」の解説

タンパク繊維
タンパクセンイ
protein fiber

天然のタンパク繊維の代表的なものとして,羊毛,絹がある.いずれも多種類のアミノ酸残基の結合したポリペプチド結合を有する.羊毛はシスチン残基を含むケラチンからなっており,シスチン結合,造塩結合(イオン結合)などにより,橋かけされている.高次構造がきわめて複雑であって,弾性回復性,吸湿性,染色性,クリンプをもち,紡織繊維としてはとくにすぐれている.絹はおもにグリシンアラニン残基よりなる比較的単純なフィブロインタンパクからなっている.すぐれた光沢,風合いにより衣料として広く用いられる.人造タンパク繊維は動物,植物中にあるタンパクのなかで繊維形成能をもつものを選び,普通は水酸化ナトリウムに溶解後,酸性凝固浴に紡糸し,のちにホルムアルデヒド処理などで不溶化して,繊維状にしたものである.トウモロコシタンパクからはVicara,落花生タンパクからはArdil,牛乳カゼインを原料としたMerinovaなどがある([別用語参照]カゼイン繊維).その他,研究試作は多くあるが,食料とのかねあい,原料コスト高,製品の性能に特徴がないなどのため,工業化されているものは少ない.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「タンパク繊維」の意味・わかりやすい解説

タンパク繊維
たんぱくせんい
protein fiber

動物を原料とする天然繊維、たとえば羊毛や絹はタンパク質からなるタンパク繊維であるが、一般的には人造タンパク繊維を意味している。動植物中に存在するタンパク質のなかで繊維形成能をもつものを選び、普通は水酸化ナトリウムに溶解後、酸性水溶液中に押し出して凝固させて紡糸後、ホルムアルデヒドで処理して不溶化した再生繊維の一種である。トウモロコシタンパク、落花生タンパクや牛乳カゼインを原料としたものなど多くの研究があるが、食料との兼ね合いによる価格高や、製品性能にいまひとつ特徴のないことにより工業化されているものは少ない。

垣内 弘]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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