グリシン(読み)ぐりしん(英語表記)glycine

デジタル大辞泉 「グリシン」の意味・読み・例文・類語

グリシン(glycine)

最も簡単な構造のアミノ酸。甘味があり、水に溶けやすい白色の結晶。動物性たんぱく質、特にゼラチンなどに多く含まれ、生合成・物質代謝系で重要な役割を果たす。グリココル

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精選版 日本国語大辞典 「グリシン」の意味・読み・例文・類語

グリシン

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] glycine )
  2. アミノ酸の一つ。化学式 CH2(NH2)COOH 甘味のある白色の単斜晶系稜柱状結晶。ほとんどすべての動物性蛋白質に含まれる。水には溶けるが、有機溶剤にはほとんど溶けない。生体内では、いろいろの代謝経路で前駆体および最終産物として、クレアチンポルフィリンの合成、解毒作用など各種の働きをもつ。医薬品や食品加工、また検出試薬などに用いられる。グリココル。アミノ酢酸。
  3. 写真用現像主薬。化学式 C8H9NO3 白色の有毒性粉末。水に溶ける。アルカリ性溶液として写真現像に用いられたが、現在はほとんど使われない。

グリシン

  1. 〘 名詞 〙 ( 大豆の学名[ラテン語] Glycine max Merrill から ) 大豆(だいず)。また、一般に、莢豆の類をいうことがある。
    1. [初出の実例]「西洋室の真白な食卓の白薔薇と菫と莢豆(グリシン)の香(かんば)しい花籠の前に」(出典:冷笑(1909‐10)〈永井荷風〉一五)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「グリシン」の意味・わかりやすい解説

グリシン(アミノ酸)
ぐりしん
glycine

不斉炭素原子をもたない唯一のアミノ酸で、かつもっとも簡単なアミノ酸。略号はGlyまたはG。タンパク質の加水分解物から最初に単離されたアミノ酸の一つ。化学式はNH2CH2COOHで、アミノ酢酸ともよばれる。分子量は75.07。水に溶けやすく、アルコールには溶けにくい。ヒトにとっては非必須(ひひっす)アミノ酸である。1820年にフランスの化学者ブラコノーHenry Braconnot(1780―1855)がコラーゲンcollagen(膠原(こうげん)質)から単離したことと、甘味があることからグリココルglycocollともよばれた。

 グリシンは動物性タンパク質、とくに絹フィブロインやゼラチンには多量に含まれ、オキシトシンバソプレッシンなどのペプチドホルモングルタチオンなどのペプチドの構成成分でもある。動物体内ではセリンとの相互転換反応によって合成されるほか、グリオキシル酸グルタミンがアミノ基供給源となってグリシンを生成する。グリシンは神経伝達物質(神経細胞間のシナプス伝達の際に軸索の末端にある神経終末から放出される化学物質)の一つである。また、生体内の代謝系でも重要な役割を果たし、核酸の塩基成分であるプリンの分解系、エネルギー代謝に関係するクレアチンの合成系、血色素、クロロフィル、ビタミンB12の成分であるポルフィリンの合成系などに関与している。さらに、生体に与えられた毒物や薬物を水に溶けやすい性質に変えて尿中や胆汁中に排泄(はいせつ)する解毒機能の一型式としてグリシン抱合がある。たとえば、安息香酸はグリシン抱合によって馬尿酸となり、尿中に排泄される。

 製法としては、モノクロル酢酸(モノクロロ酢酸)にアンモニアを反応させる方法、および絹または膠(にかわ)を希塩酸と煮沸加水分解する方法などがある。結晶形はα(アルファ)、β(ベータ)、γ(ガンマ)の三つが知られている。o(オルト)-フタルアルデヒドによって呈色し、微量でも検出できる。

[降旗千恵]

食品

グリシンは甘味、うま味をもち、静菌作用や緩衝作用があるため、食品加工の分野で食品添加物として、調味料やpH調整の目的で使用される。たとえば、豆腐、豆乳などのうま味の増加、粉末清涼飲料の風味増加、ビスケットの油の酸化防止、魚肉ねり製品や白飯の品質保持などに用いられる。

[河野友美・山口米子]

『アミノ酸シリーズ編集委員会編『アミノ酸シリーズ10 セリン、グリシン』(1970・世界保健通信社、南江堂発売)』『川合述史著『分子から見た脳』(1994・講談社)』


グリシン(Viktor Vasil'evich Grishin)
ぐりしん
Виктор Васильевич Гришин/Viktor Vasil'evich Grishin
(1910―1992)

ソ連の政治家。セルプホフで労働者の子として生まれる。1939年以来の共産党員。1950年から党モスクワ市委員会で活動。1956年3月全連邦労働組合評議会議長となり、1967年6月にその職をシェレーピンに譲るまで11年間にわたってソ連労働組合最高指導者の位置にあった。1952年の第19回党大会で党中央委員に選ばれ、1961年には幹部会員候補、1966年政治局員候補、労働組合から退いた1967年には党モスクワ市委員会第一書記となる。1971年4月には政治局入りし、以後、一貫して中堅指導者としての位置を占めた。

[塩川伸明]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「グリシン」の意味・わかりやすい解説

グリシン
Grishin, Yevgeny

[生]1931.3.23. ソビエト連邦,トゥーラ
[没]2005.7.9. ロシア,モスクワ
ロシアのスピードスケート選手。フルネーム Yevgeny Romanovich Grishin。1950~60年代に活躍し,スピードスケートでソビエト連邦に初めてオリンピックの金メダルをもたらした。オリンピックでの優勝回数は 4回を数えた。彫刻家として仕事をしていたグリシンは,自転車競技の選手として 1952年のヘルシンキ・オリンピック競技大会に出場したが,のちにスピードスケートに転向し,1956年のコルティナダンペッツォ・オリンピック冬季競技大会冬季オリンピックに初出場した。この大会の 500mを自身がもつ世界記録(40秒2)と同タイムで制し,1500mではチームメートのユーリ・ミハイロフとともに世界記録(2分8秒6)を樹立した。1960年のスコーバレー・オリンピック冬季競技大会でも同種目で 2個の金メダルを獲得した。500mではゴール直前につまずき,1秒以上ロスしたために世界新記録こそ出せなかったものの,自身がもつ世界記録と同タイムで優勝した。1500mではノルウェーのロアルト・オースと金メダルを分け合った。1964年のインスブルック・オリンピック冬季競技大会では,ほかの 2選手と 500mの銀メダルを分け合った。1968年のグルノーブル・オリンピック冬季競技大会が最後のオリンピックとなった。当時 36歳だったグリシンはソ連選手団の旗手という名誉を与えられたが,競技ではメダルを獲得することができず,500mの 4位入賞にとどまった。現役引退後はトレーナーとして尊敬を集め,レーニン勲章と赤旗勲章を授与されたほか,数々の賞に輝いた。

グリシン
Grishin, Viktor Vasil'evich

[生]1914.9.18. シェルプホフ
[没]1992.5.25.
ソ連の政治家。 1932年モスクワ測地技術学校,37年蒸気機関技術学校をそれぞれ卒業。 37年共産党加入,シェルプホフ機関庫所長代理に就任。 41年シェルプホフ地区党機関専従となった。 50~52年モスクワ市党委員会機械建設部長,52~56年同市党第二書記。 52年党中央委員。 56年全ソ中央労組評議会議長に就任,労組代表として多くの外国を訪問。 67年モスクワ市党第一書記,71年党政治局員。 86年解任。

グリシン
glycine

化学式 H2NCH2COOH ,略号 Gly 。動物性蛋白質に含まれているアミノ酸。柱状晶で,分解点 232~236℃。水に溶けるが,有機溶媒にはほとんど溶けない。種々の方法で合成されるが,フィブロインの主成分であるところから,この加水分解によっても製造される。医薬品や金属 (金,銅) の検出試薬として用いられる。

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化学辞典 第2版 「グリシン」の解説

グリシン
グリシン
glycine

aminoacetic acid.C2H5NO2(75.07).H2NCH2COOH.略号Gly.グリココルともいう.もっとも簡単なα-アミノ酸で,生体アミノ酸のなかで唯一不斉炭素原子をもたない.動物,植物にタンパク質構成アミノ酸として,または遊離の形で広く分布している.大豆ミール,くずまゆ,絹フィブロイン,ゼラチンなどの加水分解物からエチルエステル塩酸塩や金属塩として分離される.実験室的には,ホルムアルデヒドとシアン化水素とアンモニアから合成する(ストレッカーのアミノ酸合成),工業的には,モノクロロ酢酸とアンモニアから合成する.分解点292 ℃.pK1 2.34,pK2 9.60.pI5.97.苦味がある.医薬,食料品加工,ほかのアミノ酸の合成原料などに用いられる.[CAS 56-40-6]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

栄養・生化学辞典 「グリシン」の解説

グリシン

 C2H5NO2 (mw75.07).

 グリココルともいう.略号Gly,G.不斉炭素原子をもたない.タンパク質の常在アミノ酸では最も分子量の小さいアミノ酸.各種タンパク質に含まれる可欠アミノ酸.ポルフィリン,プリン,クレアチン,グルタチオンなど重要な生体物質の生合成の原料でもあり,馬尿酸,グリココール酸の生成など解毒にも用いられる.食品添加物でもある.

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漢方薬・生薬・栄養成分がわかる事典 「グリシン」の解説

グリシン【glycine】

アミノ酸の一種で、非必須アミノ酸たんぱく質を構成するアミノ酸の中でもっとも単純な構造をもつ。中枢神経系の機能に不可欠な物質で、脊髄(せきずい)や脳幹に高濃度に存在し、コラーゲン中の3分の1程度含まれる。肝臓のエタノール代謝や関節炎などの抗炎症作用があるほか、睡眠の質改善効果、抗菌作用、緩衝作用、食品添加物として調味料や酸化防止剤として用いられるなどさまざまな分野で効果を発揮する。

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改訂新版 世界大百科事典 「グリシン」の意味・わかりやすい解説

グリシン
glycine

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367日誕生日大事典 「グリシン」の解説

グリシン

生年月日:1914年9月18日
ソ連の政治家
1992年没

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