日本大百科全書(ニッポニカ) 「ダーレンドルフ」の意味・わかりやすい解説
ダーレンドルフ
だーれんどるふ
Ralf Dahrendorf
(1929―2009)
ドイツの社会学者。ハンブルクに生まれる。ハンブルク大学で哲学を、ロンドン大学で社会学を学ぶ。ハンブルク大学、チュービンゲン大学などの社会学教授を歴任、1974年以降ロンドン大学、オックスフォード大学、ベルリン社会科学研究センターなどの教授を務めた。英国から初めはナイト、ついで1993年に一代貴族の男爵に叙せられた。また、この間ドイツ社会民主党ブラント政権の外務次官、EC(ヨーロッパ共同体)委員なども務めている。『産業社会における階級および階級闘争』(1957)では、マルクスの階級理論とアメリカ社会学の構造機能分析を、ともに批判的に摂取しながら、闘争の一般理論を構築しようとして、注目を浴びた。また『ホモ・ソシオロジクス』(1959)は、人間の自由と個性に視点を据えて、新しい社会学を構想する試みとなっている。こうした姿勢は『ライフ・チャンス』(1979)にも読み取れる。ほかに『産業社会学』(1956)、『ドイツにおける社会とデモクラシー』(1965)、『現代文明にとって自由とは何か』(1975)、『現代の社会紛争』(1988)、『ヨーロッパ革命の考察』(1990)などがある。
[元島邦夫・原 純輔]
『池内信行・鈴木英寿訳『産業社会学』(1961・千倉書房)』▽『富永健一訳『産業社会における階級および階級闘争』(1964・ダイヤモンド社)』▽『橋本和幸訳『ホモ・ソシオロジクス――役割と自由』(1973・ミネルヴァ書房)』▽『ラルフ・ダーレンドルフ著、橋本和幸・鈴木正仁・平松闊訳『ユートピアからの脱出』(1975・ミネルヴァ書房)』▽『ラルフ・ダーレンドルフ著、橋本和幸・鈴木正仁・平松闊訳『価値と社会科学』(1976・ミネルヴァ書房)』▽『ラルフ・ダーレンドルフ著、日本経済新聞社訳『ヨーロッパ経済の危機――岐路にたつ成熟社会』(1982・日本経済新聞社)』▽『吉田博司他訳『ライフ・チャンス――「新しい自由主義」の政治社会学』(1982・創世記/改題『新しい自由主義――ライフ・チャンス』1987・学陽書房)』▽『ラルフ・ダーレンドルフ著、天野亮一訳『なぜ英国は「失敗」したか?』(1984・TBSブリタニカ)』▽『加藤秀治郎訳『現代文明にとって「自由」とは何か』(1988・TBSブリタニカ)』▽『岡田舜平訳『ヨーロッパ革命の考察――「社会主義」から「開かれた社会」へ』(1991・時事通信社)』▽『ラルフ・ダーレンドルフ著、加藤秀治郎訳『激動するヨーロッパと世界新秩序』(1992・TBSブリタニカ)』▽『ラルフ・ダーレンドルフ著、加藤秀治郎編・監訳『政治・社会論集――重要論文選』(1998/増補版2006・晃洋書房)』▽『加藤秀治郎・檜山雅人訳『現代の社会紛争』(2001・世界思想社)』