日本大百科全書(ニッポニカ) 「チルデン」の意味・わかりやすい解説
チルデン
ちるでん
William Tatem Tilden
(1893―1953)
アメリカの世界的テニス選手。ペンシルベニア州ジャーマンタウンに生まれ、幼少からテニスに親しんだ。2メートルに及ぶ長身を利してのサービスはキャノン・ボール・サービスといわれて絶大な威力をもち、グランド・ストロークの正確さや相手の心理を読んだ頭脳的プレーと相まってテニス界の巨匠の名をほしいままにした。ウィンブルドン大会では、決勝戦で善戦する日本の清水善造(ぜんぞう)を破った1920年のほかに、21年、30年の3回シングルスのタイトルを獲得した。デビスカップではジョンストンとともにアメリカの7回連続優勝(1920~26)の原動力となった。そのうち21年は、日本の清水善造、熊谷一弥(くまがいいちや)をチャレンジ・ラウンドで破ったものである。しかし、27年以降はフランスのラコストらの活躍により優勝を阻まれた。全米選手権大会のシングルスでは7回優勝している。31年プロに転向し、世界各地を転戦、36年(昭和11)来日し田園コロシアムで妙技をみせた。彼は実技ばかりでなく、近代テニス理論の基礎を築いた人としても評価され、著書も多数ある。
[久保圭之助]
『福田雅之助訳『チルデンのベター・テニス』(1972・ベースボール・マガジン社)』