ドイツの作家ヘルマン・ヘッセの長編小説。1919年、第一次世界大戦で重傷を負った青年の遺稿の形で発表された教養小説。初め匿名にしたのは、作者が自分の過去を清算し、新しい方向を目ざす意図からである。主人公シンクレールは、神秘的な力をもつデミアンや、その母親で理想の女性エバ夫人の導きによって、心奥に無限の世界をみつけ、自分の道と運命を認識する。中心的なテーマとしてニーチェの教義「汝(なんじ)自身になれ」が強調され、精神分析学やアジア的英知も織り込まれる。この作品は、敗戦直後のドイツの青年層に熱狂的に迎えられ、わが国でも数十年来、つねに多くの愛読者をもってきた。
[藤井啓行]
『『デミアン』(高橋健二訳・新潮文庫/実吉捷郎訳・岩波文庫)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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