デミウルゴス(その他表記)dēmiourgos

デジタル大辞泉 「デミウルゴス」の意味・読み・例文・類語

デミウルゴス(〈ギリシャ〉dēmiūrgos)

製作者の意》プラトン哲学で、原型としてのイデアにのっとって素材から世界を形成する神。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「デミウルゴス」の意味・読み・例文・類語

デミウルゴス

  1. ( [ギリシア語] dēmiourgos 製作者の意 ) プラトンの「ティマイオス篇」で、世界をつくる神。キリスト教の無から有をつくる創造神と違い、永遠不変のイデアを手本とし、イデアをうけ入れる素材を使って、世界をつくりあげていくという限られた創造神。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「デミウルゴス」の意味・わかりやすい解説

デミウルゴス
dēmiourgos

公共dēmios(<dēmos(国家,市民))のために働く者ergatēs(<ergon(仕事))を意味する古典ギリシア語。農業以外の部門の活動(ただし自家消費目的を除く)で生活の糧を得る者を指し(事実,一時期のアッティカで,土地所有貴族,農民に続く第三身分を構成),金属工,陶工,石工などから,占者,医者,楽人,伝令に至る独立職業人を含んでいた。その他この語は,都市国家(ポリス)の役員の名称となり,その地位は,最高職のアルコンにはじまり,国家ごとに上下さまざまであった。

 上記の職業人がなぜ公共奉仕者を意味するデミウルゴスの名で呼ばれるようになったかについては,ギリシア人原初共同体を想定し,そこにデミウルゴス本来の社会的機能(公共奉仕)を位置づけ,社会的分化の結果として職人デミウルゴス,役員デミウルゴスが出現したと説く解釈や,インドのように村抱えの隷属職人をもたないギリシア都市国家が,その軍事的需要を調達するために組織した,特定の対国家奉仕義務(ライトゥルギー)を負わされた団体(ローマのファブリのごとき)にその起源を求める解釈がある。なお,プラトン哲学では原素材(ヒュレ)から世界を創る建築者としての神を,さらにグノーシス主義では悪しき被造世界の創造者を意味するにいたり,〈造物主〉との訳語があてられることもある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「デミウルゴス」の意味・わかりやすい解説

デミウルゴス
dēmiourgos

製作者,職人を意味するギリシア語。 (1) ホメロスでは金属細工師,陶工などの職人や,使者や医者を意味した。ソロン以前のアテネでは貴族および農民以外の自由市民全体をさしたが,その後は特定の身分として現れることはない。エリス地方,アカイア地方などのいくつかのポリスでは高位の役人がこの名で呼ばれている。 (2) 特にプラトンの宇宙生成論 (『ティマイオス』) における神の別称。デミウルゴスは善性を本性とし,すべてのものができるだけ自己自身に似ることを望んで,無秩序,不調和に流動している混合状態 (カオス) に秩序を与え,永遠不変のイデアを範型 (パラディグマ) に,一つの魂 (プシュケー) をもつ「生ける理性的なもの」として世界を形成する。しかし世界はすでに存在する素材から形成され,デミウルゴスは世界がそこにおいて造らるべき「場所 (コーラ ) 」によって必然的な限定を受けるのであるから,デミウルゴスの世界形成は「無からの創造」 creatio ex nihiloではなく,彼自身全能の神といわれることはできない。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、和歌山県串本町の民間発射場「スペースポート紀伊」から打ち上げる。同社は契約から打ち上げまでの期間で世界最短を目指すとし、将来的には...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android