トゥールネ(英語表記)Tournai

改訂新版 世界大百科事典 「トゥールネ」の意味・わかりやすい解説

トゥールネ
Tournai

ベルギー南西部,ヘーノー州の都市。人口3万3000(1978)。フランスとの国境に位置し,スヘルデ川に臨む。カーペット・皮革・セメント工業がある。ローマ期にはすでに都市であり,フランク初期にはメロビング家の故地として重要な政治的中心地であった。12世紀末からフランス王と結びついてコミューンを発展させ,重要な中世都市となる。
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ノートル・ダム大聖堂(12~13世紀)は,ベルギーで最も壮麗な建築で,スヘルデ川流域の教会堂建築に大きな影響を与えた。ノルマンディーやライン地方の影響下に,身廊(1110-41)はロマネスク様式において初めて4層立面構成を達成し,巨大な翼廊(1145-71)は南北両端が半円形プランをなす。また中央採光塔も含め計5基の高塔を備える。北袖廊にロマネスク壁画が残る。ゴシック様式の長大な内陣(1243-55)は軽快優美で西側の重厚さと好対照をなす。宝物庫にはニコラ・ド・ベルダンの聖遺物匣(1205)のほか,優れた貴金属細工,象牙彫,タピスリー等を収蔵。近隣で産出される暗灰色の石灰石は優れた建築材として古くより知られ,素材のまま,あるいは洗礼盤や墓石板として彫刻を施して輸出もされた。絵画では,15世紀にフレマールの画家が活躍し,その弟子と目されるファン・デル・ウェイデンが生まれ,初期フランドル絵画の一中心地となる。また14~16世紀には優れたタピスリーが製作,輸出され,ブリュッセル産のものと並び高く評価された。1751年オーストリア治下,中国やマイセン等の影響をうけグリザイユと単彩による花鳥文や風景を特徴とするトゥールネ焼が始まった。第2次大戦で破壊を受けたが,鐘楼(12~13世紀)や毛織物市場(17世紀)等が修復され残っている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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