トビズムカデ(英語表記)Subspinipes mutilans scolopendra

改訂新版 世界大百科事典 「トビズムカデ」の意味・わかりやすい解説

トビズムカデ
Subspinipes mutilans scolopendra

オオムカデ科の1亜種で,日本で最大のムカデで体長15cmになるものがある。頭は濃褐色(とび色)で,両側に各4個ずつの単眼がある。胴節は21対の歩肢をもち,背板は黒色を帯びた暗緑色。歩肢は黄色か淡褐色。青森~沖縄に分布し,ムカデというとこれか近縁のアオズムカデS.s.japonicaをさすことが多い。森林土壌に生息しているが,農村郊外住宅地では人家内にもしばしば侵入し,恐怖感を与える。毒顎は黒色でがんじょう,毒腺があり,かまれると激痛があり大きくはれ,痛みが数日続くが生命にかかわった例はない。昆虫などの小動物を捕食する。初夏に産卵し,雌は数十個の卵を抱えて保護し,幼虫がかえっても巣立つまで約2ヵ月間飲まず食わずで守りつづける。その母性愛は感動的である。かまれたときはアンモニアがよいといわれる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「トビズムカデ」の意味・わかりやすい解説

トビズムカデ
とびずむかで / 鳶頭蜈蚣
[学] Scolopendra subspinipes mutilans

節足動物門唇脚(しんきゃく)綱オオムカデ目オオムカデ科に属する陸生動物。青森県以西の日本各地、朝鮮半島南部、中国大陸南部などに分布する。日本最大のムカデで、成長すると15センチメートルに達する。頭は黄赤色であるが背板は暗緑色か黒色、歩肢は黄色または橙(だいだい)色。頭に1対の触角と左右それぞれ4個ずつの単眼があり、1対の毒あごをもっている。歩肢は21対。森林の落ち葉の中や石垣のすきまなどにすみ、昆虫を主食としているが、夏季には農村や郊外の人家に侵入することがある。かまれたときの痛みは強烈で、大きく腫(は)れることがあるが、人命にかかわることはない。古来から、油に浸しておいて、外傷火傷のときの塗布薬として民間で用いられるが、効果については不明である。

篠原圭三郎]


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世界大百科事典(旧版)内のトビズムカデの言及

【オオムカデ(巨蜈蚣)】より

…熱帯,亜熱帯から暖帯地方に分布し,褐色,青緑色,暗緑色のものが多い。日本には頭が茶褐色で背が青黒く,体長15cmになるトビズムカデScolopendra subspinipes mutilans(イラスト),頭も背も暗緑色で約8cmに達するアオズムカデS.s.japonicaが本州以南にふつうであるが,メクラムカデ科には橙黄色で歩肢23対,無眼のアカムカデ類がほぼ全国に生息している。【篠原 圭三郎】。…

※「トビズムカデ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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