ニューヨークタイムズ(読み)にゅーよーくたいむず(その他表記)The New York Times

デジタル大辞泉 「ニューヨークタイムズ」の意味・読み・例文・類語

ニューヨーク‐タイムズ(The New York Times)

米国の代表的な日刊新聞の一。1851年、ニューヨーク創刊リベラルな論調で知られる。発行部数は91万6911部(2010年10月~2011年3月期平均)。NYT

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精選版 日本国語大辞典 「ニューヨークタイムズ」の意味・読み・例文・類語

ニューヨーク‐タイムズ

  1. ( New York Times ) アメリカで最も有力な新聞。ニューヨークで発行の朝刊紙で、一八五一年創刊。「記録の新聞」と呼ばれ、正確な報道、すぐれた論評で知られる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニューヨークタイムズ」の意味・わかりやすい解説

ニューヨーク・タイムズ
にゅーよーくたいむず
The New York Times

世界的に有名なアメリカの代表的高級紙。『ニューヨーク・トリビューン』紙で活躍したレイモンドHenry Jarvis Raymond(1820―1869)が銀行家のジョーンズGeorge Jonesらと共同で、安価で良質な新聞をつくることを目的とし、1851年9月18日、1部1セント、4ページの『ニューヨーク・デーリー・タイムズ』を発刊。編集を担当したレイモンドは、保守的ながら正確で均衡のとれたニュース(とくに外国ニュース)を読者に提供した。『ニューヨーク・タイムズ』と改題したのは1857年。1870年には、腐敗したニューヨーク市政を紙面で鋭く攻撃し、同紙に対する読者の信用を一段と高めた。しかしピュリッツァーハーストイエロージャーナリズムの隆盛に影響を受け、しだいに不振となり、1891年破産の危機に瀕(ひん)した。その後、1896年オックスAdolph S. Ochs(1858―1935)が買収し、「印刷に値するすべてのニュースを」というスローガンを掲げてさまざまな紙面改革を行い、1898年には、値上げされて3セントになっていた同紙をふたたび1セントに値下げするなどした結果、発行部数はわずか3年のうちに2万5000部から10万部に増えた。

 1904年にカール・バン・アンダCarr Van Anda(1864―1945)を編集局長に迎えると、同紙の紙面はいっそう充実したものとなった。1935年オックスの死去により、彼の女婿サルツバーガーArthur Hays Sulzberger(1891―1968)が経営を引き継いだ(1963年以降は息子のアーサー・オックス・サルツバーガーArthur Ochs Sulzbergerが、1992年以降はさらにその息子のアーサー・オックス・サルツバーガー・ジュニアArthur Ochs Sulzberger Jr.が後継)。1971年6月、アメリカ国防総省のベトナム秘密文書「ペンタゴン・ペーパーズ」を入手した同紙は、その大筋を特集、報道した。このスクープをめぐって政府が掲載中止を申し入れたことから、アメリカ連邦最高裁判所での審理へ持ち込まれたが、『ニューヨーク・タイムズ』紙が勝利した。これは報道の自由の点で、アメリカ新聞史上特筆されるべき事件となった(ペンタゴン・ペーパーズ暴露事件)。2002年には、これまで『ワシントン・ポスト』と共同で発行していた『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン』を完全に買い取ったほか、『ニューヨーク・タイムズ』紙面の本格的なカラー化を進め、これまで伝統と格式を重んじてきた同紙も、積極的な事業展開をみせている。紙面の特徴としては、国際報道が質・量とも他の新聞にぬきんでていることが第一にあげられる。また本紙の最後の見開き2ページを使ったオピニオン欄では、社説、オプ・エド(Opposite the Editorial Page)とよばれる論説コラムや投稿が並び、保守からリベラルまでバランスがとれている。これらの意見はアメリカ社会に大きな影響を与えているといわれている。さらに書評や劇評なども人気が高い。2006年から2009年にかけて他のアメリカの新聞と同様に広告収入の不振から、大幅なコスト削減が行われている。2007年に新社屋に移転したものの、資金繰りから2009年にこれを投資家へ売却するなど財政再建の施策が行われている。発行部数92万8000部(2009)。

[鈴木ケイ・木村綾子]

『R・アドラー著、山本晶訳『ニューヨーク・タイムズの一日』(1973・平凡社)』『ゲイ・タリーズ著、橋本直訳『王国と権力――ニューヨーク・タイムズをつくった人々』上下(1991・早川書房)』『ハリソン・E・ソールズベリー著、小川水路訳『メディアの戦場――ニューヨーク・タイムズと記者ニール・シーハンたちの物語』(1992・集英社)』『三輪裕範著『ニューヨーク・タイムズ物語――紙面にみる多様性とバランス感覚』(中公新書)』

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改訂新版 世界大百科事典 「ニューヨークタイムズ」の意味・わかりやすい解説

ニューヨーク・タイムズ
The New York Times

アメリカの日刊紙。高級紙として知られる。《ニューヨーク・トリビューン》紙の記者だったレーモンドHenry J.Raymondが2人の銀行家ジョーンズGeorge Jones,ウェスリーEdward B.Westleyと計画,1851年9月18日に《ニューヨーク・デーリー・タイムズ》の題号で創刊した(1857年,現行の題号に改称)。資本金10万ドル,4ページ建てで定価も安く1セントであった。センセーショナルなペニー・ペーパーではなく〈品のいい〉新聞をめざし,H.グリーリーの《ニューヨーク・トリビューン》の急進的な論調に反対する新聞として出発した。創刊10週後に部数は2万台にのぼったが,出費も多く,8ページ建て,2セントに値上げした。55年1月には3万6000部となり《ニューヨーク・トリビューン》と拮抗する有力紙となった。しかし,南北戦争後,共和党全国委員会議長を務めていたレーモンドが南部への寛大な処置を説いて多くの読者を失い,彼が死ぬ69年前後から世紀末にかけて《ワールド》《ニューヨーク・ジャーナル》など新興大衆紙に押されて,紙勢は下降線をたどり,93年には毎週の赤字は2500ドルを超え,部数は9000台にまで落ちた。

 1896年オックスAdolph S.Ochsが経営・編集をまかされ,〈印刷に値するすべてのニュース〉をスローガンに,取材網を拡大整備するとともに,〈教養〉ある読者層対象に日曜版に力を入れ,大衆紙の手法をとり入れながら,〈上品〉に記事を提示するスタイルをつくり上げた。世紀の変り目に,部数は8万台に伸び,正確な情報量の多い高級紙として定着した。第1次大戦にはその取材網を動員して国際社会におけるアメリカの威信の高まりとともに,国際的に注目される新聞となった。部数は1913年には約24万2000(日曜版15万8000)だったのに対して,18年には35万2000(日曜版48万6000)に急成長し,第1次大戦後24ページから40ページに増やして,記事にも広告にも膨大なスペースをもつ新聞への第一歩を踏み出した。35年オックスの死後,娘婿のサルズバーガーArthur Hays Sulzbergerが後を継ぎ,30年代から第2次大戦後にかけての《ニューヨーク・トリビューン》との競争に勝ち,アメリカの代表的な高級紙となった。ベトナム戦争中の国防総省秘密文書暴露報道(ペンタゴン・ペーパーズ事件)に先鞭をつけ,新しいジャーナリズムのあり方を領導するなど,その活力はまだ衰えていない。81年から衛星を使ったファクシミリ送信によりこれまでアメリカになかった全国版を発行し始めた。1993年6月,同紙と同じくらい伝統のある《ボストン・グローブ》(1872創立)を買収,話題になった。現在の部数は100万を少し超える程度といわれている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ニューヨークタイムズ」の意味・わかりやすい解説

ニューヨーク・タイムズ
The New York Times

世界的に権威のあるアメリカの代表的日刊紙。 1851年9月 H.レイモンドらが創刊。初め『ニューヨーク・デーリー・タイムズ』と号していたが,57年現在名に改題。当初から不偏不党で質の高いニュース報道に徹して,知的ジャーナリズムの基礎を確立した。 69年レイモンドの死後,経営権はジョーンズ家に移ったが,84~96年には苦境に立ち,一時は破産の危機にあった。しかし 96年 A.オクスが買収,「印刷に値するすべてのニュースを」というスローガンのもとに『サン』から K.アンダを迎えて編集長に据え,ニュース重点の紙面改革を行なった。編集面では,A.クロック,J.レストン,H.ソールズベリ,A.ローゼンソールらの傑出したジャーナリストが輩出している。特に海外に広い取材網を敷き,すぐれた海外特派員を輩出していることは有名である。 1971年6月にはアメリカ政府のベトナム戦争介入の過程を分析した『国防省秘密文書』を公表して,「国益」の名のもとに掲載を禁止しようとする政府と対決,「国民の知る権利」を主張して最高裁で勝利を収めた。発行部数は朝刊 107万 1120,土曜版 102万 9287,日曜版 165万 2800 (1997) 。

ニューヨーク・タイムズ
The New York Times Co.

アメリカの新聞社で,『ニューヨーク・タイムズ』,『ボストン・グローブ』などの発行元。 1851年創業,96年設立。『ニューヨーク・タイムズ』はニューヨーク市周辺向けが中心であるが,全国版,外国版も発行し,世界中で購読されている。このほか南東部とカリフォルニアを中心に 28紙の新聞を発行。雑誌では『ファミリー・サークル』『ゴルフ・ダイジェスト』など9誌を発行したが,97年末その大半を売却した。また8テレビ局,2ラジオ局を保有し,電子出版やニューメディアなど情報事業を多角的に経営する。東京支局がある。年間営業収入 28億 6600万ドル,総資産 36億 3900万ドル,従業員数1万 3100名 (1997) 。

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百科事典マイペディア 「ニューヨークタイムズ」の意味・わかりやすい解説

ニューヨーク・タイムズ

米国の代表的高級日刊紙。1851年《ニューヨーク・トリビューン》の記者だったヘンリー・ジャーヴィス・レーモンドが創刊,1857年現行の題号となった。《ニューヨーク・ワールド》などの〈イエロー・ジャーナリズム〉と呼ばれた新興大衆紙におされ,一時衰退したが,1896年アドルフ・オックスが経営・編集にあたって今日の隆盛の基礎を築いた。正確な内外ニュース報道,すぐれた論評で知られる。世界主要国の首都で週刊国際版を発行。発行部数約107万部,日曜版約163万部(1998)。
→関連項目NANA

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ニューヨークタイムズ」の解説

『ニューヨーク・タイムズ』
New York Times

ニューヨークで刊行される新聞。質の高い報道と論説で定評があり,世界的にも注目される。そのような地位は,1896年に潰れかけていた新聞を買収して,「正確で品位があり信頼される新聞」をめざしたアドルフ・サイモン・オックスの信念と経営手腕によるところが大きい。

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世界大百科事典(旧版)内のニューヨークタイムズの言及

【オックス】より

…1876年ノックスビルの《トリビューン》紙の印刷工となり,次いでチャタヌーガの《ディスパッチ》紙の編集に転じ,78年同市の《タイムズ》紙の経営に参加。地方紙経営者として大成功を収めたが,96年衰勢にあった《ニューヨーク・タイムズ》の経営をまかされ,同紙を保守的な高級紙として再建し,今日の基礎を築いた。【香内 三郎】。…

【ジャーナリズム】より

… 現代においてジャーナリズムの批判機能がもっともみごとに発揮されたのは,アメリカのベトナム戦争秘密文書公開とウォーターゲート事件であり,また日本の田中角栄首相の土地ころがし暴露であった。国防総省文書Pentagon Papers事件と呼ばれる第1の事件は,ベトナム戦争の経過の全容について国防総省が調査機関につくらせた膨大な報告書を《ニューヨーク・タイムズ》が紙面に掲載しはじめ,政府が裁判所に記事掲載差止めを提訴しているあいだに《ワシントン・ポスト》などの新聞もこの報告書を入手して,この宣戦布告なき参戦をいっせいに点検したことにはじまる事件である。言論の自由をさだめた憲法修正第1条に照らして新聞の文書公開は正当と判決され,各紙の記事がやがてアメリカ軍のベトナム撤兵つまり戦争終結を実現させた。…

【レストン】より

…1932年イリノイ大学を卒業後,オハイオ州でジャーナリズム関係の仕事につくが,34年AP通信社に入社。ロンドン支局勤務を経て,39年には《ニューヨーク・タイムズ》に移る。ロンドン支局長の時代に,イギリス市民の平静な戦中生活に感銘を受け,41年ワシントン支局(1946年支局長)に移ると,戦時情報局(QWI)の設置に協力した。…

※「ニューヨークタイムズ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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