日本大百科全書(ニッポニカ) 「スクープ」の意味・わかりやすい解説
スクープ
すくーぷ
scoop
報道活動における「特ダネ」のこと。他社を出し抜いて、とくに大きなニュース・バリューのある事実を新聞や放送に独占的に発表すること、あるいはその記事や放送をいう。「すっぱ抜き」と称される活動もスクープに含めうるものがある。近代の報道主義の新聞では激しい速報競争が繰り広げられ、一つの事項に競争者多数がねらいをつけ、時間差で一歩でも早く報道しようと努力を続けてきた。しかし、本来のスクープは、早さだけでなく、ニュースとしての内容的な価値の大きさが厳しく問われなければならない。粘り強く系統的に事実を明らかにし、それがはらむ問題の本質に迫ったインベスティゲイティブ・リポーティングinvestigative reporting(調査報道)の成果こそ、単発のすっぱ抜きより価値の大きいスクープといえる。ペンタゴンペーパーズの暴露掲載(『ニューヨーク・タイムズ』1971年6月13日連載開始)、『ワシントン・ポスト』のバーンスタイン、ウッドワード両記者によるウォーターゲート事件報道(1972年6月から300日間にわたる取材・報道)、ロッキード事件第一報(『朝日新聞』1976年2月5日付朝刊)、リクルート事件第一報(『朝日新聞』1988年6月18日付朝刊)のような特ダネこそ、現代にふさわしいスクープというべきであろう。
[桂 敬一]