ノドン(読み)のどん(英語表記)Nodong

翻訳|Nodong

共同通信ニュース用語解説 「ノドン」の解説

ノドン

北朝鮮が旧ソ連の短距離弾道ミサイルスカッド」(射程約300~500キロ)をベースに開発した単段式の中距離弾道ミサイル(射程約1300キロ)。日本列島のほぼ全域を射程に収め、発射すれば10分前後で着弾するとされる。1993年5月の日本海への発射実験を経て97年ごろから実戦配備発射台付き車両で運用され、発射位置を事前に正確に捕捉するのは困難。2006年に在韓米軍司令官は北朝鮮が約200基保有しているとの推定を公表したが、現状は不明。(共同)

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知恵蔵 「ノドン」の解説

ノドン

北朝鮮の弾道ミサイルとロケット通称。1993年5月29日、北朝鮮は日本海沿岸の北部咸鏡北道蘆洞(ハムギョンプクト・ノドン)の基地から日本海中部に向けて弾道ミサイルの発射実験を行った。これは射程が1000kmないし1300kmに達する「ノドン1」のテストとみられている。2006年7月5日にはナホトカ沖に向け弾道ミサイル7発が発射され、このうち1発が「テポドン2」でこれはすぐ墜落、3発が「ノドン」あるいは「スカッド」の射程延伸型で、3発が「スカッドC」と見られる。ノドンの実験は13年ぶり。実用化には相当数のテストが必要なため、「100基、または200基が配備されている」との説もあるが疑問がある。また、北朝鮮は98年8月31日、「テポドン1」と米国が呼ぶロケットを太平洋に発射した。北朝鮮は80年代から旧ソ連設計のスカッドB(射程約300km)を国産し、さらに、その射程を500kmに伸ばしたスカッドCを造っていた。韓国に対してなら十分の射程である。「ノドン1」を開発したのは、もっぱら輸出のためとみられるが、日本も射程に入る。スカッド・シリーズの精度は低く、スカッドBで誤差は約500m、射程が長いと一層誤差は大きくなるため、火薬弾頭では軍事的には効果は低い。第2次世界大戦末期、ドイツは今日のスカッドとほぼ同等のV2号6000発を造り、うち1115発をロンドンに発射したが、死者は約2600人で、1発当たり2.3人の死者が出た。湾岸戦争中には、イラクがスカッド系のミサイル39発をテルアビブに発射したが、死者は4人だった。問題は核弾頭があるか否かだ。北朝鮮は06年10月9日咸鏡北道の吉州(キルジュ)付近のトンネルで核実験を行った。地震計により、威力は火薬1000t相当と推定された。核爆発を起こすのに必要な量のウラン(約25kg)か、プルトニウム(約8kg)を使うと、爆発力は1万〜2万t相当になるもので、威力が異常に低いことから、実験失敗説も出たが、事前に中国に対し「4000t相当に抑えた実験を行う」と通告していたことが判明し、意図的に爆発力を小さくする威力制御の技術も持っている公算が大となった。これに比べれば、核爆弾のある程度の小型、軽量化は簡単であり、北朝鮮が実験の6日前「現代的核兵器を保有している」と発表したのと符合する。ノドン等に積めるミサイル弾頭にするには直径1m以下、重量1t以下程度にする必要があろうが、多分それができる、と考えられる。 北朝鮮は兵器用の高純度プルトニウムを10発分前後保有していると推計され、6者(6カ国)協議で寧辺(ニヨンビョン)の原子炉等の施設が凍結、無能力化されても、既存のプルトニウムがどうなるか、は日本にとり重大な問題だ。

(田岡俊次 軍事ジャーナリスト / 2008年)

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百科事典マイペディア 「ノドン」の意味・わかりやすい解説

ノドン

朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の弾道ミサイル。名称はミサイル実験場がある蘆洞にちなむ。1号は全長15m,直径1.3m,射程距離約1000km。核弾頭またはVX(毒ガス)弾が装着可能という1段式液体燃料ミサイル。旧ソ連のスカッド・ミサイルを改良する形で進められ,1984年以降3段階にわたる改良型をへて,1993年ノドン1号を開発,同年5月に日本海に向けて合計4発を発射実験,1996年に実戦配備されたという。これにより日本本土のほぼ全域が射程距離内に入ったと想定される。また1998年8月,ノドンを上回る射程を有するテポドンを発射し,東北アジアの緊張を高めた。
→関連項目朝鮮民主主義人民共和国

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ノドン」の意味・わかりやすい解説

ノドン
のどん

北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が開発した準中距離弾道ミサイルの通称。射程距離は約1300キロメートル。咸鏡北道(かんきょうほくどう)の町名「蘆洞(ロドン)」にちなむ。「労働」と同音のため、「労働1号」などと誤って称されたこともある。「ノドン」は韓国式の読み方であり、実際には誤記である。北朝鮮では「火星(ファソン)7号」とよばれる。1993年5月に日本海に向けた発射実験で使用された可能性が高く、その後配備が進んだ。北朝鮮全土にわたって軍事関連の地下施設が存在すると考えられ、また、スカッドミサイルと同様に発射台付き車両に搭載されて移動運用が可能なことから、発射の具体的な兆候を事前に把握するのは困難とされる。

[礒﨑敦仁 2020年10月16日]

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