ハラフ文化(読み)ハラフぶんか

改訂新版 世界大百科事典 「ハラフ文化」の意味・わかりやすい解説

ハラフ文化 (ハラフぶんか)

シリアのトルコ国境近くのハーブール川沿いにあるテル・ハラフTel Halafで,ドイツのオッペンハイムM.F.von Oppenheimが1911-13,29年に発掘した彩文土器標式とする北部メソポタミアの先史時代文化。この土器は西アジア陶芸の白眉とされるすばらしいものである。遺跡の主体は城壁をめぐらした古代都市グザナGuzanaで,アラム王国の王子カパラの前900年ころの宮殿があった。宮殿跡の調査に関連して深く掘り下げたとき,新型式の多数の彩文土器が出土したことから,のちにハラフ式土器と命名されたが,遺構の詳細は不明で,北部メソポタミア先史文化のなかに,ハッスナ期(-サーマッラー期)-ハラフ期-ウバイド期として位置づけることができたのは,他の遺跡における層位的発掘であった。しかし1960年代に始まった北部メソポタミアの新しい発掘によって,ハッスナ,サーマッラー,ハラフの各文化は,編年的順序というよりも,むしろ分布を異にするもので,ハラフ文化は北部メソポタミアの北辺からシリアに広がっていることが確認されている。従来のハラフ期を決めるうえで基準となっていたアルパチヤ遺跡の10~6層のうち,10~7層を中期とし,アルパチヤ10層以前を前期,6,5層を後期として,その間ハラフ文化は断絶なしに発展してきたと認め,ハラフ前・中期がハッスナ文化およびサーマッラー文化とほぼ並行して存在していたと考えられている。ハラフ後期の南メソポタミアはウバイド2期の時代であって,ウバイド3期になると,メソポタミア北部は南から拡張してきたウバイド文化に交代する。ハラフ文化の特色は彩文土器であって,水ごしした粘土を用い,良好な焼成で,スリップをかけ,よく磨研してある。多彩で幾何学文を主体として牛を代表とする動物,人物などを描いている。豊満な土偶,石製護符があり,スタンプ印章を使っていた。エンマー小麦と大麦を栽培していたようで,家畜として羊,ヤギ,豚,牛を飼育していた。方形建築の住居とともに特色のある建築としてドーム形とドームに方形をつけた形の,いわゆるトロス式建築がある。宗教的な機能をもつか,倉庫のようなものか,なお議論が続いている。なおハラフ期から銅利器,銅製装身具などの金属器が若干発見されているので,この時期金石併用時代と一般に考えているが,冶金証拠はないとする意見もある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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