リストがハンガリーの民族音楽の旋律に基づき1839年から85年にかけて作曲した一連のピアノ独奏曲。全部で19曲を数えるが、曲集として出版されたのはそのうちの15曲であり、「ペストの町の謝肉祭」や「ラコッツィ行進曲」などの有名な小品が含まれている。リストは幼年時代ハンガリーの片田舎(いなか)に住んでいたので、母国の民族音楽やロマ(かつてはジプシーとよばれた)の音楽に終生愛着をもち続け、緩やかな導入部と速いテンポの主部からなるチャールダーシュ舞曲の形式を多く用いて、独特なリズムをもつこれらの狂詩曲を書いた。なお、大部分は四手のピアノ連弾用、また管弦楽用に編曲され、彼の代表作として広く親しまれているが、第二番嬰(えい)ハ短調(1847)がもっとも有名である。
[三宅幸夫]
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…音楽上のラプソディは,そこから断章としての性格と即興性に富んだ自由な形式を受け継ぎ,ロマン派初期においてトマーシェクVáclav Jan Křtitel Tomášek(1774‐1850)らの抒情的ピアノ小品(キャラクター・ピース)の形でまず現れた。リストの19曲からなる《ハンガリー狂詩曲》(1885)はそうしたラプソディの頂点をなす作品である。そのうちの数曲は管弦楽用に編曲され,19世紀後半以後の民族的性格の強い管弦楽用のラプソディ(ドボルジャークの《三つのスラブ狂詩曲》(1878),アルベニス(1887)やラベル(1908)の《スペイン狂詩曲》など)の創作を刺激した。…
… 第2期(1839‐47)はピアノのビルトゥオーソ時代で,ヨーロッパ全土を演奏旅行し,各地で熱狂的に迎えられた。全19曲からなるピアノのための《ハンガリー狂詩曲》(1885)に着手したのもこの時期であるが,重要な作品は少ない。47年ウィトゲンシュタイン侯爵夫人カロリーネと恋愛に陥り,2人は翌年からワイマールで新生活を始める。…
※「ハンガリー狂詩曲」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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