謝肉祭(カーニバル)を描いた音楽作品。謝肉祭には戸外での陽気な仮装行列がつきもので,この仮装行列は19世紀ロマン派の作曲家たちの想像力を刺激し,いくつもの名曲が生まれた。R.シューマンはピアノ曲《謝肉祭,4個の音符上の小さな情景》(1835)と《ウィーンの謝肉祭騒ぎ》(1840)を作曲。とくに有名な前者では,愛人の住む土地の名前と作曲者自身の姓の綴りから抽出したA,S,C,Hの文字を音名に読みかえて音楽のモティーフを作り,このモティーフから《前口上》《オイゼビウス》《フロレスタン》《ショパン》《休息》《ペリシテ人と戦うダビド同盟の行進》など21の小曲を紡ぎ出す。ほかにパガニーニの《ベネチアの謝肉祭》(1829),ベルリオーズの序曲《ローマの謝肉祭》(1834。本来はオペラ《ベンベヌート・チェリーニ》の第2幕への序曲),サン・サーンスの2台のピアノを含む室内楽組曲《動物の謝肉祭》(1886)などがよく知られている。
執筆者:後藤 暢子
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ロベルト・シューマン作曲の、21曲の性格小品からなるピアノ曲集(1834~35。作品9)。「四つの音符上の小さな情景」というフランス語の副題は、シューマンが当時婚約していた女性の生まれた町の名Asch(アッシュ)と、シューマン自身の名前SCHumAnnにあるアルファベットASCHをそれぞれイ(A)、変ホ(Es)、ハ(C)、ロ(H)音に置き換え、これらの4音を組み合わせた3種類の動機Sphinxes(スフィンクス)を基礎に全曲が成り立っていることを意味している。各曲は仮装舞踏会のさまざまな姿と情景を描き、自由な形式と内容でシューマン独自の世界を形成している。なお、ドボルザークにも同名の管弦楽用序曲がある(作品92。1892年プラハ初演)。
[三宅幸夫]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…カトリック系ヨーロッパ社会で始まった,年に1度の民衆的祝祭。〈謝肉祭〉と邦訳される。カーニバルの起源は,現世を支配する社会機構からの解放と農神サトゥルヌスの黄金時代への回帰を実現する,ローマ時代の農神祭サトゥルナリアのような先キリスト教文化の農耕儀礼にたどることができる。…
…15世紀から16世紀にかけて,今日のドイツ,オーストリア,スイスなどの諸都市において,謝肉祭(カーニバル)の期間に盛んに演じられた一連の演劇をいう。この演劇は,当時都市の中心勢力となっていた手工業者(職人,マイスター)のなかから,ゲルマン土着の春祭の伝統を受けつぎつつ生まれでたものであり,その性格はキリスト教的であるよりは,むしろきわめて民衆的・祝祭的なものであった。…
※「謝肉祭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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