パフラビー語(読み)パフラビーご(その他表記)Pahlavi

改訂新版 世界大百科事典 「パフラビー語」の意味・わかりやすい解説

パフラビー語 (パフラビーご)
Pahlavi

中期ペルシア語の中でアベスターの訳注およびゾロアスター教宗教文学に用いられた言語ササン朝初期の碑文の言語と区別して〈書物のパフラビー〉と限定することもある。現存資料は内容的にはササン朝ペルシア後期にさかのぼるが,実際に書かれたのは大部分イランのイスラム化以後,9世紀とされる。パフラビー語の表記は数世紀前の歴史的綴り字を保持し,またアラム語系のイデオグラム(表意文字)を多用するため,実際の発音を知るためには,より表音的に書かれたマニ教系中期ペルシア語との比較が不可欠である。古代ペルシア語に比べて名詞動詞の活用は極度に簡略化されているが,新ペルシア語の最古の段階(10世紀ころ)と比較しても,言語的に大きな差は認められない。
ペルシア語
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「パフラビー語」の意味・わかりやすい解説

パフラビー語
パフラビーご
Pahlavī language

古代イラン,ササン朝の言語で,おもにゾロアスター教の文献によって知られるもの。中期ペルシア語。アラム文字に由来する文字で書かれているが,アラム語の単語表意文字として借用する独特の書法があり,読むのがむずかしい。現在まで伝わっているゾロアスター教の文献には,ササン朝のものはごく少く,7世紀なかばにイスラム化してから書かれたものがほとんどである。 (→ペルシア語 )

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「パフラビー語」の意味・わかりやすい解説

パフラビー語
ぱふらびーご

中期イラン語方言の一つで、ササン朝ペルシア(226~651)の言語である。中核をなす資料はゾロアスター教の文献であり、そのほか世俗的文献を含む。アラム系の文字で書かれるが、多くのアラム語形が表意文字として用いられており、複雑な書記体系をつくっていて、判読はきわめて難解である。なお、パフラビーPahlavī(あるいはペフレビー)という名称は、本来「パルチアの」という意味の呼称に由来する。

[柘植洋一]

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