日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒカリキンメダイ」の意味・わかりやすい解説
ヒカリキンメダイ
ひかりきんめだい / 光金目鯛
lanterneye fish
splitfin flashlightfish
[学] Anomalops katoptron
硬骨魚綱キンメダイ目ヒカリキンメダイ科に属する海水魚。この科の魚は世界で6属8種あり、日本では本種のみが千葉県、八丈島、高知県、琉球(りゅうきゅう)列島でとれているにすぎないが、台湾、西・中部太平洋に分布する。体は長円形で側扁(そくへん)し、背びれは2基に分かれる。腹びれ基部と肛門(こうもん)の間の腹縁に稜鱗(りょうりん)がある。目の直下に大きな半月状の発光器をもっていることで有名。発光器は眼下の黒色の凹所に収められており、黄白色面を表に向けて発光し、光を消すときは発光器そのものを1回転させ、裏側の黒色面を表に出して消光する。発光器は開放型で外通孔があり、海水中の発光バクテリアを共生させ、その光を利用する。全長は30センチメートルほどになる。日本では体が大きくて水深200メートルの岩礁域付近にすむが、南方の各地では体は小さく10センチメートル未満で、水深10メートル以浅の岩礁域にすむ。日本にはいない別属のPhotoblepharon palpebratusは、発光器を回転させるのではなく、黒色膜が瞼(まぶた)のように下から上へと発光面を包み、消光する。この2種は南太平洋のサンゴ礁に多く、暗夜に行動し、月夜には深みやサンゴ礁の暗所に潜む。漁師は大きい魚を釣るとき、発光器を切り取って餌(えさ)の上4、5センチメートルにつけ、魚を誘うという。
[岡村 收・尼岡邦夫 2016年6月20日]