ヒマシ(蓖麻子)油(読み)ひましゆ(英語表記)castor oil

翻訳|castor oil

改訂新版 世界大百科事典 「ヒマシ(蓖麻子)油」の意味・わかりやすい解説

ヒマシ(蓖麻子)油 (ひましゆ)
castor oil

ヒマの実から圧搾法により採取した油。種子の含油率は35~57%。ヒドロキシル基をもつ炭素数18の不飽和脂肪酸であるリシノール酸が主成分で,85~90%を占める。融点(凝固点)-10~-17℃,比重0.950~0.975,屈折率nD30=1.477~1.479,ケン化価176~187,ヨウ素価81~91(不乾性油)。一般の油脂より粘度,比重が高く,アルコール,氷酢酸とよく混合するが,石油エーテルには溶けにくい。ヒドロキシ酸型油脂のうちで唯一の工業用原料とされる。用途は,脱水して共役脂肪酸型の油脂として油ワニスエナメルなど塗料用,硬化ヒマシ油脂肪酸としてグリース用,可塑剤などの原料,ポマードなど化粧品用,医薬,潤滑用などである。ロート油はヒマシ油を硫酸化して中和したもので,染色,皮革工業などに用いられる。
執筆者:

ヒマシ油は古くから下剤として用いられてきた。主成分のリシノール酸は十二指腸リパーゼの作用によりトリリシノール酸に分解され,小腸を刺激して下痢を起こす。いわゆる刺激性下剤として食中毒に用いられる。副作用が少ないことから小児老人にも用いられるが,峻下剤であり,骨盤内の充血を伴うことから,妊婦には用いられない。ヒマシ油は下剤のほか,皮膚用薬の製剤原料などにも用いられる。
下剤
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のヒマシ(蓖麻子)油の言及

【油】より

…種子から融点38℃のバターのような油脂が採集される。その他,日本では下剤として知られるヒマシ油の原料であるヒマや,キク科のニガーシードNiger seedなどもアフリカで改良された油料植物である。 地中海地方ではオリーブが重要である。…

【下剤】より

…(5)刺激性下剤 腸粘膜を刺激して,反射的に蠕動(ぜんどう)を促進する薬をいう。ヒマシ油の主成分はリシノール酸のトリグリセリドであるが,十二指腸で消化液中のリパーゼによって加水分解され,リシノール酸の局所刺激により下痢を起こす。妊婦用または駆虫薬使用の際の下剤としては用いない。…

※「ヒマシ(蓖麻子)油」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」