リパーゼ

精選版 日本国語大辞典 「リパーゼ」の意味・読み・例文・類語

リパーゼ

〘名〙 (lipase) 脂肪が加水分解グリセリン脂肪酸になる反応を助ける酵素。動物では膵臓などに存在し、植物種子、酵母、細菌などにも存在する。
※児童のお弁当百種(1931)〈小林完〉六「味噌の蛋白質は、その醸成期中に於て、〈略〉、ベプターゼ、チターゼ、リパーゼ〈略〉チマーゼ等の栄養酵素体が醸成されて居るので」

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デジタル大辞泉 「リパーゼ」の意味・読み・例文・類語

リパーゼ(lipase)

中性脂肪加水分解して脂肪酸グリセリンとにする酵素。動物の膵液すいえき・胃液・腸液には消化酵素として含まれる。

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四訂版 病院で受ける検査がわかる本 「リパーゼ」の解説

リパーゼ

基準値

45~50U/ℓ(比色法)

リパーゼとは

 膵臓に含まれる消化酵素のひとつで、十二指腸に分泌されて食物中の脂肪を分解する働きをする。


とくに膵臓の異常を調べる検査です。アルコールの飲み過ぎなどで、膵細胞が破壊されると血液中に増加します。

急性膵炎で高値に

 リパーゼも、前項アミラーゼ(→参照)と同じように、すい臓の病気を調べるための重要な検査です。膵炎などで膵細胞が破壊されると、リパーゼは血液の中へたくさん出てきて高値になります。

 この変化は、ほとんどアミラーゼと同じ変動を示しますが、リパーゼのほうがより膵臓に特異的に変動します。「特異的」とは、ほかの病気の影響が少ないということです。急性膵炎では、激しい腹痛とともに、リパーゼの値が基準値の数倍になります。

 慢性膵炎膵臓がん、膵のう胞でも上昇しますが、その程度は2~3倍にとどまります。しかし、急性膵炎のように1~2週間の上昇ではなくて、異常値が持続することが特徴です。

腎不全でも高値に

 血液中のリパーゼは、尿へ排泄されます。そのため、じん臓の働きが低下する腎不全ではリパーゼの排泄が悪くなり、膵炎をおこしていなくても、血液中で持続的な軽度の上昇がみられます。

 また、肝疾患でも軽度の上昇をみることがあります。

重症急性膵炎では繰り返し測定

 血清を用いて、自動分析器で測定します。測定法により基準値が異なります。検査当日の飲食は普通にとってかまいません。

 膵炎では、リパーゼはアミラーゼとほとんど同様に変動しますが、基準値に戻るのに、アミラーゼより1~2週遅れる特徴があり、急性膵炎の回復の指標として重要です。

 激しい腹痛を示す急性膵炎の重症例では、厳重な経過観察が必要で、基準値になるまで繰り返し測定します。

 腹痛があり、リパーゼが上昇したときは膵臓の病気を考え、膵酵素や腹部超音波(→参照)、腹部CT(→参照)、逆行性膵胆管造影(→参照)などで精密検査を行います。

 膵臓の病気では、腹部症状(腹痛)があるため病気が推測できますが、腹部症状がなくリパーゼが上昇しているときは、腎臓からの排泄低下と考え、尿検査、尿素窒素(→参照)やクレアチニン(→参照)などの血液検査、腎盂じんう造影(→参照)などが必要になります。

疑われるおもな病気などは

◆高値→膵疾患:急性膵炎、慢性膵炎、膵臓がん、膵嚢胞など

    その他:腎不全、肝障害など

◆低値→慢性膵炎(膵機能荒廃期)など

医師が使う一般用語
「リパーゼ」

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改訂新版 世界大百科事典 「リパーゼ」の意味・わかりやすい解説

リパーゼ
lipase

中性脂肪を脂肪酸とグリセリンに加水分解する反応を触媒する酵素。動物組織,植物種子,菌類などに存在する。生物種や組織によって特性がかなり異なる。この酵素は,水層と脂肪層の境界面でのみ作用しうるので,脂肪を乳化するなどして水層との境界面積を多くすると,一般に反応性は上がる。動物組織における主要なリパーゼは膵臓リパーゼ膵リパーゼともいう)で,摂取された脂肪の多くは腸内で膵臓リパーゼによって分解される。膵臓リパーゼは脂肪酸の種類に対してはあまり特異性がなく,十二脂腸内で胆汁酸によってミセル化した脂肪に作用して,これを分解し吸収されるようにする。反応の至適pHは7~9で,カルシウムイオンで反応が促進される。胃にもリパーゼが存在するが,胃液のような酸性環境の中では作用しないといわれ,エステラーゼとして区別されることがある。また,血清中のリパーゼはリポタンパク質リパーゼと呼ばれカイロミクロンや超低比重リポタンパク質(ULDL)を加水分解し,血液を透明にすることから,透明化因子とも呼ばれる。血液以外の組織のリポタンパク質リパーゼは,貯蔵された脂肪から脂肪酸を取り出す機能に関与している。
消化酵素
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「リパーゼ」の意味・わかりやすい解説

リパーゼ
りぱーぜ
lipase

中性脂肪のエステル結合を加水分解して脂肪酸とグリセロールを生ずる反応を触媒する酵素で、加水分解酵素の一つ。一価のアルコールと脂肪酸とのエステルを加水分解するエステラーゼを含めてよぶ場合もある。動物組織中に広く存在するが、とくに胃液、膵(すい)液、腸液などの消化液に多量に含まれており、膵リパーゼは脂質分解酵素として重要で、ステアプシンとよばれることもある。弱アルカリ性でもっともよく活性化され、強酸性の胃中ではほとんど作用しない。食物は十二指腸で膵液のために弱アルカリ性となり、また胆汁酸の作用で食物中の脂肪が乳濁液になって酵素の作用を受けやすくなる。このほか、とくにリン脂質を加水分解するフォスフォリパーゼがある。なお、植物では種子に比較的多く含まれ、カビや細菌などの微生物にも分布している。

[若木高善]

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百科事典マイペディア 「リパーゼ」の意味・わかりやすい解説

リパーゼ

中性脂肪を脂肪酸とグリセリンに加水分解する酵素。生物界に広く分布し,動物の胃液,膵液,腸液,脂肪組織をはじめ脂肪種子,特にトウゴマの種子,菌類,ブドウ球菌類,さらに牛痘ウイルスにも見いだされる。最適pHは種や臓器によって異なる。動物の主要な消化酵素である膵臓リパーゼは基質特異性が低く,いろいろの種類の中性脂肪を加水分解する。血液中のリパーゼは血液を透明にする役目を果たし,体組織中のリパーゼは貯蔵脂肪から脂肪酸を作る反応にかかわっている。
→関連項目胃液消化薬

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化学辞典 第2版 「リパーゼ」の解説

リパーゼ
リパーゼ
lipase

EC 3.1.1.3.正しくはトリアシルグリセリンエステルヒドロラーゼ(triacylglycerol acylhydrolase)とよぶ.トリアシルグリセリンを脂肪酸とグリセリンとに加水分解する反応を触媒する酵素.この酵素反応は乳化状態で進行し,トリグリセリドのα,α′位の加水分解がβ位のそれより優先する.動物の膵臓および組織,植物種子,糸状菌中に存在する.膵臓由来のものは腸管内での脂肪の消化に重要である.ブタの膵臓リパーゼは分子量4.2×104.[CAS 9001-62-1]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「リパーゼ」の意味・わかりやすい解説

リパーゼ
lipase

トリグリセリド (グリセリンに3分子の脂肪酸がエステル結合している脂肪) のエステル結合を加水分解する酵素の一種。動植物界に広く見出される。一般に脂肪の脂肪酸鎖の長いほうによく作用する。リパーゼには,リポ蛋白質 (血漿中) によく作用するリポ蛋白リパーゼ,エステラーゼ作用をもつリパーゼ,動物脂肪によく作用する動脂性リパーゼ,モノグリセリドに特異性の強いモノグリセリドリパーゼなども知られている。

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栄養・生化学辞典 「リパーゼ」の解説

リパーゼ

 トリアシルグリセロールやジアシルグリセロールを加水分解して脂肪酸とアシル基の一つ少ないエステルもしくは遊離のグリセロールを生成する反応を触媒する酵素.

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デジタル大辞泉プラス 「リパーゼ」の解説

リパーゼ

加水分解酵素。消化作用があり、薬剤では健胃薬、消化薬などに含有。

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世界大百科事典(旧版)内のリパーゼの言及

【消化】より

…また菌類を食べている昆虫の腸内には,菌類に多く含まれている二糖類のトレハロースをブドウ糖に加水分解するトレハラーゼがある。高級脂肪酸と高級アルコールのエステルである蠟は,リパーゼでは加水分解できないから,普通動物にとって栄養的価値のないものであるが,ハチノスツヅリガの仲間の幼虫はみつ蠟だけで育つ。南アフリカに住むミツオシエというキツツキ類の鳥は,みつ蠟を好んで食べている。…

【消化酵素】より

… 唾液の中にはデンプン分解酵素である唾液アミラーゼ,胃液中にはタンパク質分解酵素であるペプシンがあり,酸性の環境ではたらく。膵液中にはデンプン分解酵素として膵アミラーゼ,タンパク質分解酵素としてトリプシン,キモトリプシン,カルボキシペプチダーゼ,エラスターゼなど,脂肪分解酵素としてリパーゼ,ホスホリパーゼなどがある。これらは中性ないし弱アルカリ領域ではたらく。…

【中性脂肪】より

…トリグリセリドのおもな蓄積場所は脂肪細胞の細胞質内であり,そこに脂肪滴となって蓄えられ,必要に応じて動員され,燃料として他の組織に補給される。 脂肪組織に蓄えられたトリグリセリドがエネルギー源として利用される最初のステップは,リパーゼによる加水分解である。アドレナリンやグルカゴンなどのホルモンは脂肪細胞のアデニル酸シクラーゼの活性を高めることにより環状AMP濃度を増加させ,これはさらにプロテインキナーゼ(タンパク質リン酸化酵素)の活性を高めることによりリパーゼを活性化する。…

※「リパーゼ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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