ヒンドゥスターン平原(読み)ヒンドゥスターンへいげん(その他表記)Hindustān

改訂新版 世界大百科事典 「ヒンドゥスターン平原」の意味・わかりやすい解説

ヒンドゥスターン平原 (ヒンドゥスターンへいげん)
Hindustān

インド亜大陸北部の大平野。北のヒマラヤ山脈と南のインド半島の安定陸塊との間の陥没地帯に沖積層が厚く堆積してつくられた。ヒンドゥスターンの語義はペルシア語の〈インド地方〉で,広義のヒンドゥスターン平原インダスガンガーガンジス)両河流域平野を指すが,狭義には後者のみに限る。インド・パキスタン分離独立後,インドではブラフマプトラ川の平野を含めたインド国内の平原をインド大平原Great Indian Plainと呼んでいる。

 インダス河口からガンガー河口までの延長は3000km,幅は最大で400km余,狭い所でも150kmはある。きわめて低平で,デリー北方のインダス・ガンガー分水界でも標高250mにすぎない。ヒマラヤ山脈から運び出される莫大な量の土砂(俗称〈ヒマラヤの塵〉)は,山麓に緩勾配の扇状地を形成し,その上を多数の流路が網状に乱流する。インダス川とその5本の支流がつくるパンジャーブ平野では降水量が必ずしも多くないが,氷河を抱く高山からの流れが年中絶えないので灌漑に利用され,古くはインダス文明を支えた。近代的灌漑施設が整備された19世紀後半からは,小麦をはじめ綿花などの栽培が拡充しインドの穀倉地帯となっている。

 これに反してインダス下流域はもともと乾燥した地域であったが,その後の乾燥化と土砂堆積による河道変遷などで居住環境が悪化した。ガンガー平野には北のヒマラヤから本流のほかヤムナー,サルダ,ガンダク,コシなどの諸河川,南の半島部からチャンバル,ベトワ,ソーンなどが合流する。中流部は厚い沖積層に覆われ起伏に乏しいが,洪水でしばしば浸水する沖積低地カダール)とめったに水をかぶらない1段高い沖積台地(バンガール)に分かれている。インド・アーリヤ文化が熟成された土地で,現在もインド最大の人口稠密地である。ガンガーがラジマハール丘陵を回って東南東に転ずると,下流平野となる。多くの分流に分かれるとともに東からの大支流ブラフマプトラ川を合わせてベンガル湾に注ぐ。コルカタ(旧カルカッタ)は最も西の分流フグリ川下流左岸(東岸)にある。無数の感潮河川が分流するガンガー・デルタはきわめて低湿で,大洪水の災害を受けやすい土地である。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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