フランス領西インド諸島のマルティニーク島出身の黒人精神科医、思想家。フランスで精神医学を修め医師となるが、白人社会における黒人の矛盾に満ちた立場を分析した『黒い皮膚、白い仮面』(1952)で世に出た。ついでアルジェリアの病院に勤務したが、アルジェリア独立運動に共鳴して1956年病院を辞しアルジェリア民族解放戦線(FLN)に参加し、その指導的理論家となった。アルジェリア独立をみることなく1961年病気療養先のアメリカで客死するが、その著作とくに『地に呪(のろ)われたる者』(1961)は単に植民地体制を暴力そのものであると告発した反植民地主義の理論の書であるばかりでなく、ヨーロッパ文明に対する根源的批判の書として第三世界の民族運動やアメリカの黒人解放運動に大きな影響を与えた。
[平瀬徹也]
『『フランツ・ファノン著作集』全4巻(1969~1970・みすず書房)』▽『鈴木道彦・浦野衣子訳『地に呪われたる者』(1996・みすず書房)』▽『海老坂武・加藤晴久訳『黒い皮膚・白い仮面』(1998・みすず書房)』▽『ファノン著、北山晴一訳『アフリカ革命に向けて』新装版(2008・みすず書房)』▽『ファノン著、宮ヶ谷徳三・花輪莞爾・海老坂武訳『革命の社会学』新装版(2008・みすず書房)』▽『海老坂武著『フランツ・ファノン』(2006・みすず書房)』
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…ソレルは,ブルジョアジーが国家機構を通じて行使する力をフォルスforceと呼び,プロレタリアートが革命の際,対抗的に行使する力をビオランスviolenceと呼んで,フォルスの非倫理性に対してビオランスの倫理性を対置した。こうした暴力の倫理性の強調は,現代ではF.ファノンに受け継がれている。彼は,暴力が規律を伴って注意深く使用されるとき,革命を大きく前進させるとした。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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