第三世界(読み)だいさんせかい(英語表記)The Third World

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

第三世界
だいさんせかい
The Third World

一般的には,欧米先進資本主義諸国 (第一世界) ,社会主義諸国 (第二世界) に対してアジア,アフリカ,ラテンアメリカなどの発展途上国をさす呼称。語源的にはフランス革命時の「第三身分」 Tiers Étatに由来する。かつて中国指導部は米ソ両大国を第一世界,発展途上国を第三世界,両者の中間にある日本,ヨーロッパ共同体 ECなどの資本主義諸国を第二世界と定義し,みずからを第三世界に位置づける「三世界論」を展開したこともある (1974年の国連資源特別総会での 鄧小平副首相演説) 。また帝国主義本国 (メトロポリス) に従属する衛星周辺国 (サテライト) の意味として,あるいはアメリカにおける黒人社会などのように先進国内部の被差別社会に対して使用される場合もある。

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知恵蔵の解説

第三世界

アジア、アフリカ、ラテン・アメリカなど、大国への従属を経験した途上国を、世界の変革の主体とみなす際の呼称。フランス革命の主体の第三身分になぞらえた概念。先住民を同様の観点から「第三世界」の一部とすることがある。第三世界諸国は非同盟、77カ国グループの結成などを通じ、大国支配的な国際秩序の変革を試みた。しかし1970年代半ば以降、産油国や新興工業経済地域(NIES)と他の途上国の経済格差が拡大。他方、飢餓に苦しむサハラ以南アフリカなどは時に第四世界と呼ばれ、後発発展途上国として、別個の取り組みが要請された。北の南への関心が低下するなか、格差と相違を抱えたこれらの国々を指す第三世界という言葉になお意味があるかどうかが、問われている。

(坂本義和 東京大学名誉教授 / 中村研一 北海道大学教授 / 2007年)

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百科事典マイペディアの解説

第三世界【だいさんせかい】

アジア,アフリカ,ラテン・アメリカの旧植民地・従属諸国,いわゆる発展途上国群をさす言葉。フランスのA.ソービーが初めて用いた。第2次大戦後,民族主義の高揚のもとに逐次独立を達成し,とくに1970年代以降は国際社会における発言力を強化したが,依然として南北間の格差(南北問題),石油その他第三世界内での資源力の格差など,問題点は数多く残されている。なお,第三世界の中で,資源もなく工業化のための資本も技術もない後発発展途上国を第四世界ということもある。
→関連項目カストロ構造的暴力第2次世界大戦

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世界大百科事典 第2版の解説

だいさんせかい【第三世界 Third world】

1950年代初めに,フランスの人口学者ソービーAlfred Sauvyは,当時インドシナで激化していた民族解放戦争を〈第三世界Le Tiers Mondeの台頭〉と評した。これはフランス大革命が,第三身分le tiers étatの台頭であったことになぞらえたものだった。これ以降,〈第三世界〉という言葉は広く用いられることになる。ただし,〈第三世界〉の内容についてはさまざまあり,欧米ではアメリカ,西欧諸国の先進国を〈第一世界〉,ソ連(現,ロシア),東欧の社会主義移行諸国を〈第二世界〉,そして熱帯,亜熱帯の旧植民地・従属国で第2次世界大戦後独立した国々を〈第三世界〉と呼ぶいい方もある。

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大辞林 第三版の解説

だいさんせかい【第三世界】

先進資本主義諸国を第一世界、社会主義諸国を第二世界と呼ぶのに対し、アジア・アフリカ・ラテン-アメリカなどの発展途上にある国を指す呼称。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

第三世界
だいさんせかい
tiers mondeフランス語

一般的には、西欧を中心とした先進資本主義国家群を「第一世界」、ソ連・東欧の社会主義国家群を「第二世界」とし、そのいずれにも含まれないアジア、アフリカ、ラテンアメリカの開発途上国家群を「第三世界」とよんだ。1950年代初めころから、歴史的復権を目ざすこれらアジア、アフリカ、ラテンアメリカ諸国の著しい台頭や、民族主義運動の発展を、フランス革命における「第三身分」le tiers tatの台頭になぞらえて使われ始めた用語で、その後しだいに一般化した。もっとも、70年代なかばに中国が提起した「三つの世界論」では、米ソ両超大国を第一世界、その他の発展した資本主義諸国、社会主義諸国を第二世界とする独特の規定の仕方が示されているが、その場合でもアジア、アフリカ、ラテンアメリカの開発途上諸国を第三世界と規定している点で、前述の第三世界の概念と変わるところはない。第三世界諸国は50年代にはAA会議に象徴されるアジア、アフリカの連帯運動を通じて、60年代以降は非同盟諸国会議の運動を軸として、大国優位、先進国中心の世界秩序の変革を推進しようと努めてきた。なお70年代以降、資源問題がクローズアップされるなかで、資源も資本も技術ももたない後発開発途上国を「第四世界」として第三世界と区別する議論も登場してきた。第三世界内部の経済格差の拡大から生ずる問題は、「南南問題」とよばれる。しかし、東西冷戦終結後の90年代に入り、ソ連の解体、ソ連・東欧諸国の民主化、市場経済化の進行などによっていわば「第二世界」が事実上消滅すると、「第三世界」という用語もまた根拠を失うことになる。ただ現実にはまだ、開発途上世界を「第三世界」とよぶケースがまったくなくなったわけではない。あるいは現状変革勢力という意味合いでの「第三世界」という用語も、まだ生き続けているといってもよいだろう。[小田英郎]

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世界大百科事典内の第三世界の言及

【社会主義】より

…1948年のコミンフォルムによるユーゴスラビア共産党除名とそれに続く国交断絶と経済封鎖,56年の反ソ・反政府デモが国内に広がったハンガリー動乱,60年になって表面化した中ソ論争などがある。 それにたいして大戦後に独立を達成した第三世界においては,社会主義は急速な工業発展のためのイデオロギーとなった。ソ連は後進国の工業発展のモデルと目されるようになり,一党支配や軍事独裁の国を含めて多くの国が,それぞれの国の流儀での社会主義を名のるようになった。…

【世界政治】より

…ところで,古典的主権国家体系の主要な担い手であった先進国の側で,主権の空洞化が進行している反面,古典的国際政治の下では政治的実体と認められなかった非欧米世界で,〈民族〉として自己を認識し,〈主権国家〉の形成をめざす運動が急速に高まったのが第2次大戦後の国際政治の主要な特質であることはいうまでもない。北の先進国が東西にブロック化する状況の下で,新興諸国の多くが東西ブロックを拒否する〈中立主義〉〈非同盟主義〉という象徴を掲げ,〈第三世界〉の主権国家体系を主張したのは自然なことであった。 このように新興諸国の主権の主張は,反東西軍事ブロックであり,1954年の〈平和五原則〉に見られるように,反軍事支配であり,平和指向の強いものであった。…

※「第三世界」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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