フィチン酸(読み)フィチンサン

化学辞典 第2版 「フィチン酸」の解説

フィチン酸
フィチンサン
phytic acid

myo-inositol hexaphosphate.C6H18O24P6(660.04).カルシウムマグネシウム複塩として広くイネ科植物や高等植物の種に存在する.脱脂した種子あるいは穀類を,酸あるいはアルカリで抽出し,金属塩として沈殿させると得られる.myo-イノシトールリン酸化によっても合成される.遊離酸は淡黄色の粘ちゅうな液体.水に易溶,有機溶媒に難溶.100 ℃ で着色し,125 ℃ で黒化する.無機酸や酵素フィチナーゼによりイノシトールリン酸とに加水分解されるが,アルカリには安定である.植物体中では,おもに種子の結実の際に増加し,発芽の際に減少する.高カルシウム血症の治療薬に用いられる.[CAS 83-86-3]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

栄養・生化学辞典 「フィチン酸」の解説

フィチン酸

 C6H18O24P6 (mw660.03).

 フィチンともいう.コメ,ムギなどの穀類に含まれるmyo-イノシトールの六つヒドロキシル基がすべてリン酸エステルになった六リン酸エステル.植物の種子などに含まれており,金属を結合することから,金属の利用性を下げるといわれる.例えば,ダイズにもフィチン酸は含まれているので,ダイズタンパク質は脱フィチンをしないとカルシウムの利用性を下げるとされる.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フィチン酸」の意味・わかりやすい解説

フィチン酸
フィチンさん
phytic acid

イノシットヘキサリン酸のこと。化学式は C6H18O24P6・3H2O 。植物中にフィチン (フィチン酸のカルシウム,マグネシウム塩) として広く存在する。メソイノシットのヘキサリン酸エステルである。黄色粘稠な液体。 100℃で着色し,125℃で黒化する。酸で加水分解され,イノシット (シクロヘキサンヘキサオール) とリン酸を生成する。植物種子では結実のときその含有量が増加し,発芽のとき減少するのでリン,カルシウム,マグネシウムの供給源であると考えられている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

潮力発電

潮の干満の差の大きい所で、満潮時に蓄えた海水を干潮時に放流し、水力発電と同じ原理でタービンを回す発電方式。潮汐ちょうせき発電。...

潮力発電の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android