日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
フランクリン(John Hope Franklin)
ふらんくりん
John Hope Franklin
(1915―2009)
アメリカ合衆国の黒人歴史家。オクラホマ州のレンティスビルに生まれ、10歳のとき付近のタルサに移り住む。最初は父のあとを継いで弁護士志望だったが、フィスク大学の学生時代に歴史研究に興味を抱いた。1935年同大学を卒業、ハーバード大学大学院に進み、1936年に修士号、1941年に博士号を取得した。彼の歴史学の特色は、フランクリン以前の黒人歴史家が概して「黒人史の歴史家」だったのに比べて、黒人史を広くアメリカ史の全歴史過程のなかに正当に位置づけ、同時に黒人史の視点からアメリカ史、とりわけ南部史の科学的解明に貢献したことにある。フィスク大学、ハワード大学などで教鞭(きょうべん)をとったのち、1964年から16年間シカゴ大学教授、ついでデューク大学教授を務めたり、アメリカ黒人の生活・歴史研究協会、南部歴史学協会、アメリカ歴史家協会、アメリカ歴史学協会などの会長を歴任したのは、このような彼の学問的立場と無関係ではない。膨大な数にのぼる諸著作のなかで、日本で翻訳出版されているものに次の2冊がある。From Slavery to Freedom:A History of Negro Americans(井出義光他訳『アメリカ黒人の歴史――奴隷から自由へ』1978・研究社出版)、Race and History:Selected Essays, 1938―1988(本田創造監訳『人種と歴史』1993・岩波書店)。また社会的諸活動の一環としては、1997年に設けられたクリントン大統領の諮問機関で7人の専門家からなる人種関係委員会の委員長を務めた。外国の大学を含めて授与された名誉学位の数は100を超える。
[本田創造]
『本田創造著『アメリカ南部奴隷制社会の経済構造』(1964・岩波書店)』▽『本田創造著『アメリカ黒人の歴史 新版』(岩波新書)』