ブタ流行性下痢(読み)ぶたりゅうこうせいげり(英語表記)porcine epidemic diarrhea

日本大百科全書(ニッポニカ)「ブタ流行性下痢」の解説

ブタ流行性下痢
ぶたりゅうこうせいげり
porcine epidemic diarrhea

ブタとイノシシが感染する、ウイルスを原因とする急性伝染病。略称PED。日齢や季節を問わずに感染し、食欲不振と水様性下痢をおもな症状とする。成長したブタは感染しても発症しないこともある。また、発症しても回復することがある。しかし、若齢で重篤化する傾向にあり、10日齢以下の哺乳(ほにゅう)ブタの場合、死亡率は高い。家畜伝染病予防法による届出伝染病に指定されており、診断には病性鑑定が必要である。ヒトには感染しない。

 病原体は、コロナウイルス科アルファコロナウイルス属のPEDウイルスである。糞(ふん)便中に排泄(はいせつ)されたウイルスが経口感染して伝播(でんぱ)する。農場で感染したブタや汚染された輸送車両、人の衣類や履き物を介して拡散すると考えられ、抗体陰性農場に伝播すると爆発的に流行する。

 予防には農場への車両、人、ブタの出入り管理と衛生対策を組み合わせ、侵入と蔓延(まんえん)の徹底した防止が必要である。とくに若齢の哺乳ブタへの被害を防ぐため、繁殖分娩(ぶんべん)舎にウイルスを侵入させない対策が重要である。発生した場合には、ウイルス侵入防止対策を徹底したうえで、乳汁免疫の誘導を目的とする母ブタ接種ワクチン(弱毒生ワクチンと不活化ワクチン)を使用して哺乳ブタへの感染を低減させる。感染ブタには抗生物質投与や脱水防止の補液投与といった対症療法を施す。

 PEDは1971年にイギリスで初めて認識され、1978年にベルギーでコロナウイルスによる疾病と断定された。アジア地域では1970年代以降、中国と韓国で発生があったとされており、2000年代に入ってからはさらに台湾、日本、ベトナム、タイ、フィリピンなどの広い地域で発生が確認されている。2010年以降には中国で新しいPEDウイルス株が大規模に流行し、100万頭以上の子ブタが死亡した。また、アメリカでは2013年4月に発生が確認されて急速に拡大しており、中国由来の新しいPEDウイルス株による可能性が高いと考えられている。日本では2013年(平成25)10月に7年ぶりに発生が確認された。2014年8月31日時点で、1道37県の817農場で発生が確認され、発症数は123万3240頭、死亡数は37万7471頭。家畜防疫員による出荷の指導や車両や人の消毒、と畜場における感染対策などが進められている。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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