結晶によるX線回折において,回折波の進行方向と結晶中の原子の配列のようすとを関係づける条件式。ブラッグ父子によって導かれた。図のような原子の配列に波長λのX線が入射角θで入射したとき,X線の道すじA1とA2の長さの差(光路長の差)は,2dsinθである。これが波長の整数倍すなわち,2dsinθ=nλ(nは整数)となれば二つの波が干渉して強めあい,回折波が生ずる。この式をブラッグ条件という。この条件をベクトル表現したものをラウエ条件と呼ぶが,両者は表現が異なるだけで内容は同一である。なお,図のA1とA1′の光路長はθによらずいつも等しい。また,A2とA3の光路長の差は,A1とA2がブラッグ条件を満たすとき,やはり2dsinθ=nλであり,干渉条件を自動的に満足していることは当然である。ブラッグ条件は,X線回折現象の物理的意味を直観的にとらえるのに適している。
→X線回折
執筆者:鹿児島 誠一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ブラッグの式(Bragg's formula)ともいう.結晶によるX線の回折条件を表す基本式で,1912年,Bragg(ブラッグ)父子により導かれた.結晶中に面間隔をもつ平行な原子網面群を考えると,図から明らかなように,
2d sin θ = nλ
(ここで,nは正の整数,λはX線の波長)を満足するとき,行路差が波長の整数倍になるので強い回折線が生じる.この式をブラッグの式,θをブラッグ角という.この式が成り立つとき,入射X線は原子網面によって鏡面反射されたと考えてもよいので,ブラッグ条件を満たす回折をブラッグ反射という.この式は電子線,中性子線にも適用される.これはラウエ条件と同等である.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…ラウエはさらに,回折の条件として,ラウエ条件を定式化し,結晶中の原子間隔,X線の波長,入射方向,回折線の現れる方向の間の関係を導いた。一方,W.L.ブラッグは,結晶によるX線の回折は,原子の並んだ面での波の反射によるものという考えを直観的に抱き,それを写真にとって実証するとともに,この考えに基づいてX線回折の条件としてブラッグ条件と呼ばれる式を提出した。この条件はラウエ条件とまったく同等のものであるが,ラウエ条件よりはるかにわかりやすい表現形式をとっている。…
…アデレード大学に入学したが,1908年父の転勤に伴ってイギリスに移り,09年からはケンブリッジのトリニティ・カレッジで学んだ。M.vonラウエによる結晶のX線回折像の数学的解析(ラウエ条件)に疑問をもち,この現象を格子面によるX線の反射とみなすことにより,X線の波長λ,格子面の間隔d,X線の視射角(入射角の余角)θとの間に,正の整数をnとして,nλ=2dsinθの関係(ブラッグ条件)が成立するとき,そのθの方向に回折線が現れることを明らかにした。さらにこの条件と父ブラッグが13年に製作したX線分光計を使用して,塩化ナトリウム,塩化カリウム,方解石,閃亜鉛鉱,蛍石,方鉄鉱などの結晶構造を解明,15年には父とともにノーベル物理学賞を受賞した。…
※「ブラッグ条件」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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