電子線(読み)デンシセン

デジタル大辞泉 「電子線」の意味・読み・例文・類語

でんし‐せん【電子線】

真空中に放射された高速度電子の流れ。X線管ブラウン管電子顕微鏡などで利用電子ビームEB(electron beam)。

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精選版 日本国語大辞典 「電子線」の意味・読み・例文・類語

でんし‐せん【電子線】

  1. 〘 名詞 〙 真空中に放射された高速度の電子の流れ。陰極を加熱して放出され、陽極に向かって直進する。物質にあたると二次電子やX線を放出したり、回折蛍光電離感光などの作用を行なう。X線管、ブラウン管、電子顕微鏡などに利用される。陰極線。電子ビーム。〔電気工学ポケットブック(1928)〕

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化学辞典 第2版 「電子線」の解説

電子線
デンシセン
electron beam

】真空中に放射された自由電子のビームをいい,陰極線とほとんど同義に用いられる.普通には,熱電子放出により得られる.電子線のエネルギーは加速電圧V(ボルト)で表されることが多い.波長λは,nm の単位で,

λ =
で与えられる.電子線を利用する装置にはブラウン管オシログラフ電子回折,電子顕微鏡などがある.【高エネルギー放射線としての電子線は1~10 MeV のエネルギーのものがもっともよく用いられる.物質中での透過力はX線に比べてはるかに小さく,線エネルギー付与(LET)は大きいが,物質に対する放射線化学的作用はX線やγ線と本質的には同じである.密度1 g cm-3 の物質中への進入度は MeV で表したエネルギーのほぼ1/2の cm で,たとえばエネルギーが1 MeV で物質が水の場合,約5 mm である.電子加速装置としてはバンデグラフ加速器,線形加速器など数種類がある.パルス化した電子線はパルス放射線分解用放射線に用いる.

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百科事典マイペディア 「電子線」の意味・わかりやすい解説

電子線【でんしせん】

一定方向に進む電子の流れ。電子ビームとも。ふつう熱電子を電場で加速して作る。物質にあたると原子に散乱され,また原子を励起または電離してX線放射,蛍光・電離・写真作用等を起こす。種々の電子管電子顕微鏡等に応用される。また電子が粒子性のほかに波動性(物質波)をもつことを利用し,電子線を物質に透過または反射させて回折像を撮影し,結晶構造,特に表面層や薄膜の研究に用いる(電子線回折)。
→関連項目陰極線回折菊池正士蛍光板電子電子レンズ分子線

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改訂新版 世界大百科事典 「電子線」の意味・わかりやすい解説

電子線 (でんしせん)
electron beam

電子ビームともいう。一定の方向に進む電子の細い流れ。ほぼ一定の運動エネルギーをもつものを指すことが多い。最初は陰極線として1859年にJ.プリュッカーによって発見されたもので,その契機は,真空放電陽イオンが陰極に衝突したとき二次電子が出て,それが加速されてガラスの内壁に衝突し,陰極線ルミネセンスを生じたことである。陰極線が電磁場で曲げられることが観測された結果,負電荷をもつ微粒子の流れであることが97年にJ.J.トムソンにより明らかにされ,これによって電子の存在が知られた。このような経緯から,現在でも真空放電などで生ずる電子線を陰極線と呼ぶ場合がある。また,放射性元素から出る放射線のうち,β線も電子線にほかならない。電子線を得るもっとも一般的な方法は,熱電子を真空中で加速するものである。利用としてはレーダーやテレビなどのブラウン管への画像や文字の表示,電子顕微鏡,物質の加工(電子ビーム加工)などがあり,さらに波動性をもつことからその回折現象(電子線回折)を利用した物質内や表面における原子配列やその乱れなど,原子分子レベルの構造の研究に広く役だっている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「電子線」の意味・わかりやすい解説

電子線
でんしせん

「電子ビーム」のページをご覧ください。

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