化学辞典 第2版「電子線」の解説
電子線
デンシセン
electron beam
【Ⅰ】真空中に放射された自由電子のビームをいい,陰極線とほとんど同義に用いられる.普通には,熱電子放出により得られる.電子線のエネルギーは加速電圧V(ボルト)で表されることが多い.波長λは,nm の単位で,
λ =
で与えられる.電子線を利用する装置にはブラウン管オシログラフ,電子回折,電子顕微鏡などがある.【Ⅱ】高エネルギー放射線としての電子線は1~10 MeV のエネルギーのものがもっともよく用いられる.物質中での透過力はX線に比べてはるかに小さく,線エネルギー付与(LET)は大きいが,物質に対する放射線化学的作用はX線やγ線と本質的には同じである.密度1 g cm-3 の物質中への進入度は MeV で表したエネルギーのほぼ1/2の cm で,たとえばエネルギーが1 MeV で物質が水の場合,約5 mm である.電子加速装置としてはバンデグラフ加速器,線形加速器など数種類がある.パルス化した電子線はパルス放射線分解用放射線に用いる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報