電子線(読み)デンシセン

化学辞典 第2版の解説

電子線
デンシセン
electron beam

】真空中に放射された自由電子ビームをいい,陰極線とほとんど同義に用いられる.普通には,熱電子放出により得られる.電子線のエネルギーは加速電圧V(ボルト)で表されることが多い.波長λは,nm の単位で,

λ =
で与えられる.電子線を利用する装置にはブラウン管オシログラフ電子回折電子顕微鏡などがある.【高エネルギー放射線としての電子線は1~10 MeV のエネルギーのものがもっともよく用いられる.物質中での透過力はX線に比べてはるかに小さく,線エネルギー付与(LET)は大きいが,物質に対する放射線化学的作用はX線やγ線と本質的には同じである.密度1 g cm-3 の物質中への進入度は MeV で表したエネルギーのほぼ1/2の cm で,たとえばエネルギーが1 MeV で物質が水の場合,約5 mm である.電子加速装置としてはバンデグラフ加速器,線形加速器など数種類がある.パルス化した電子線はパルス放射線分解用放射線に用いる.

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百科事典マイペディアの解説

電子線【でんしせん】

一定方向に進む電子の流れ。電子ビームとも。ふつう熱電子を電場で加速して作る。物質にあたると原子に散乱され,また原子を励起または電離してX線放射,蛍光・電離・写真作用等を起こす。種々の電子管電子顕微鏡等に応用される。また電子が粒子性のほかに波動性(物質波)をもつことを利用し,電子線を物質に透過または反射させて回折像を撮影し,結晶構造,特に表面層や薄膜の研究に用いる(電子線回折)。
→関連項目陰極線回折菊池正士蛍光板電子電子レンズ分子線

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精選版 日本国語大辞典の解説

でんし‐せん【電子線】

〘名〙 真空中に放射された高速度の電子の流れ。陰極を加熱して放出され、陽極に向かって直進する。物質にあたると二次電子やX線を放出したり、回折、蛍光、電離、感光などの作用を行なう。X線管、ブラウン管、電子顕微鏡などに利用される。陰極線。電子ビーム。〔電気工学ポケットブック(1928)〕

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世界大百科事典 第2版の解説

でんしせん【電子線 electron beam】

電子ビームともいう。一定の方向に進む電子の細い流れ。ほぼ一定の運動エネルギーをもつものを指すことが多い。最初は陰極線として1859年にJ.プリュッカーによって発見されたもので,その契機は,真空放電陽イオンが陰極に衝突したとき二次電子が出て,それが加速されてガラスの内壁に衝突し,陰極線ルミネセンスを生じたことである。陰極線が電磁場で曲げられることが観測された結果,負電荷をもつ微粒子の流れであることが97年にJ.J.トムソンにより明らかにされ,これによって電子の存在が知られた。

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