ブレイディ法(読み)ブレイディホウ(英語表記)Brady Act

デジタル大辞泉 「ブレイディ法」の意味・読み・例文・類語

ブレイディ‐ほう〔‐ハフ〕【ブレイディ法】

Brady law》1994年に発効した米国銃砲規制法。銃の購入に際して5日間の待機期間をもうけ、その間に警察による購入希望者の犯罪歴の調査を義務づけている。1981年のレーガン大統領銃撃事件の際に銃弾を受けて重傷を負ったブレイディ報道官にちなんでつけられた名称

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

知恵蔵 「ブレイディ法」の解説

ブレイディ法

1981年のレーガン大統領暗殺未遂事件で銃弾を受けたブレイディ報道官から名を取り、93年11月成立、94年2月末に発効した、連邦銃規制法(68年)以来の本格的銃規制法。短銃の購入に際して5日間の待機期間を設け、その間に購入希望者の犯罪歴の調査(バックグラウンド・チェック)を義務付けたもの。銃砲規制論議は長らく、購入者に対し一定の調査期間を置けとするハンドガン・コントロール(74年設立の市民団体)と、憲法を盾に規制に反対する、製造業者の組織、全米ライフル協会(NRA:National Rifle Association)との対立という構図をとってきたが、銃による悲劇が続発する現実が、アメリカ的伝統に根ざした反対論を封じ込めた格好となった。銃所持の野放し状態から規制へ向けて踏み出したという象徴的意義は大きい。銃規制派は、ブレイディ法をさらに進めて銃所持の自由そのものに踏み込んで、銃の免許制、登録制を盛り込んだ新法の成立を目指すが、全米ライフル協会を中心とする規制反対派の抵抗も根強い。99年4月のコロラド州のコロンバイン高校乱射事件を契機に銃規制強化の機運が高まる中、少年期に重罪を犯した者の銃保有を生涯禁ずる、などの内容を盛り込んだ、銃規制を強化する法案が提出され、上院で可決されるも、下院では否決された。2002年5月、銃規制に消極的なブッシュ政権は、司法省最高裁に提出した書面において、NRAの主張に沿う形で従来の憲法解釈を変更し、武器所有を国民の権利、個人の権利として容認する姿勢を前面に打ち出した。クリントン政権下で減少に向かった銃犯罪は99年以降、横ばい状態で、2億丁近い銃が市中に出回っているとされる。

(井上健 東京大学大学院総合文化研究科教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

百科事典マイペディア 「ブレイディ法」の意味・わかりやすい解説

ブレイディ法【ブレイディほう】

アメリカの銃砲規制法(1993年成立,1994年発効)。名称は提唱者J.Bradyにちなむ。短銃の購入に際して5日間の待機期間を設け,その間に購入希望者の犯罪歴の調査を義務づけたもの。1981年のレーガン大統領暗殺未遂事件(大統領報道官のブレイディが重傷を負った),1992年の日本人留学生服部剛丈射殺事件などを契機としてクリントン政権によって制定。
→関連項目銃砲刀剣類所持等取締法

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

ゲリラ豪雨

突発的に発生し、局地的に限られた地域に降る激しい豪雨のこと。長くても1時間程度しか続かず、豪雨の降る範囲は広くても10キロメートル四方くらいと狭い局地的大雨。このため、前線や低気圧、台風などに伴う集中...

ゲリラ豪雨の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android