銃砲,刀剣類等の所持,使用等に関して危害予防上必要な規制を加えることを定めた法律。1958年に銃砲刀剣類等所持取締令に代えて制定された。銃刀法と略称。銃砲,火薬類の製造,販売などの取締りについては,かつては,銃砲火薬類取締法(1910公布)があった。第2次大戦後,占領軍は,日本非武装化の徹底策の一つとして,銃砲等所持禁止令(1946公布)により,鉄砲,刀剣類,火薬類の所持を厳しく制限した。しかし,1950年に至り,銃砲刀剣類等所持取締令によって取締りの緩和が図られると同時に,火薬類の製造,販売などの規制については別に火薬類取締法が定められ,さらに,53年には,武器等製造法が定められるなど,政策が移り変わった。
銃刀法は,取締対象を銃砲刀剣類にしぼり,それらがもつ社会生活上の利用価値と強い殺傷力ゆえの危険性という二面性を考慮しつつ,それらの所持,使用等に関し規制を加えることによって,危険を未然に防止しようとしている。このため,銃刀法は,銃砲刀剣類について,その所持を一般的に禁止し,所持の許可は特定の者に特定の場合にだけ与えることとし,規制を実効あるものにするため一定の行政権限を行使し,法律違反に対しては厳しい罰を加えることを,その基本的内容としている。銃刀法が対象とする〈銃砲〉とは,けん銃,小銃,機関銃,砲,猟銃その他金属性弾丸を発射する機能を有する装薬銃砲および空気銃(圧縮ガスを使用するものを含む)のことである。〈刀剣類〉とは,刃渡り15cm以上の刀,剣,やり,および,なぎなた,あいくち,45度以上に自動的に開刃する装置を有する飛出しナイフのことである(2条)。これら銃砲または刀剣類の所持は,法が定める場合を除き,禁止されている(3条)。けん銃,小銃,機関銃または砲の輸入,模造けん銃の所持および輸入,販売目的の模擬銃器の所持,模造刀剣類の携帯も一般的に禁止されている(3条の2,22条の2,22条の4)。
銃刀法がいう〈所持〉の形態としては,保管,携帯,運搬がある。所持の許可は,都道府県公安委員会によって行われ(4条1項),許可証が交付される。一方,文化庁長官は,美術品若しくは骨とう品として価値のある火なわ式銃砲等の古式銃砲又は美術品としての価値のある刀剣類の登録を行い(14条1項),その所有者に登録証を交付する。これら許可証および登録証は,銃砲または刀剣類の携帯,運搬に際してはつねに携帯していなければならず,警察官はその提示を要求できる。
銃刀法は,ほかに,猟銃・空気銃の取扱い講習会,猟銃所持許可申請者に対する技能検定,射撃練習場の指定と立入検査,銃砲保管状況に対する報告徴収と立入検査などを定めている。
銃刀法は,ときどきの社会情勢を反映してたびたび改正されている。最近では,銃器犯罪情勢の深刻さから,1993年に,けん銃等所持罪について〈10年以下の懲役又は200万円以下の罰金〉から〈1年以上10年以下の懲役〉とする法定刑の強化,けん銃等およびけん銃部品の譲渡し,譲受け等の一般的禁止と処罰規定の新設などを内容とする改正があった。95年には,けん銃等発射罪の新設,けん銃等の密輸入等に関する罰則強化,クリーン・コントロール・デリバリーを実効的にするための罰則強化,けん銃等に関する犯罪等の捜査に際し警察官等が行うけん銃等の譲受け等に関する規定の新設などを内容とする改正が行われた。95年の法改正は,けん銃犯罪捜査の手法に新しい局面を開くものとされている。
執筆者:神長 勲
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銃砲刀剣類等の所持、使用等に関する危険予防上必要な規制について定めた法律。昭和33年法律第6号。一般に銃刀法と略称される。この法律により、銃砲刀剣類の所持、輸入、譲渡しや譲受けが、原則として禁止される。また、これを所持するためには、都道府県公安委員会の許可が必要とされ、許可の条件が細かく規定されている。この許可は18歳未満の者、精神病者、麻薬中毒者、住居の定まらない者などには認められず、許可を受けた者についても、その取扱いの基準が厳しく定められている。これらに違反する場合には、犯罪として処罰される。たとえば、けん銃等を不法に所持する場合は1年以上10年以下の懲役に処せられる(31条の3第1項)。なお、美術品、骨董品(こっとうひん)である刀剣類は、都道府県教育委員会(政令により文化庁長官)に登録することが必要である。
この法律は、沿革的には、第二次世界大戦後、軍隊の解体と軍国主義の排除を徹底するため、1946年ポツダム勅令による銃砲等所持禁止令が定められ、これにより銃砲等の所持が禁止されたことに由来する。その後、銃砲刀剣類等所持取締令が1950年(昭和25)に制定され、1955年の大改正を経て、これを受け継いで、1958年に現行の法律が制定された。
ところで、戦後、暴力団や団員の数が急増し、利権争いが激化するのに伴って、暴力団が銃砲刀剣、とくにピストルなどの銃器を用いた対立抗争事件が全国各地で多発している。このような背景のもとで、暴力団が競って外国からピストルを大量密輸入しており、モデルガンの改造事件も後を絶たない。そのため、警察庁および各都道府県警察は、銃器の所持、輸入などの取締りに力を入れている。なお、暴力行為等処罰ニ関スル法律にも、銃砲刀剣類による加重傷害(1条ノ2)の規定がある。
[名和鐵郎]
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