翻訳|Broadway
米東部ニューヨークの中心地区マンハッタン島にある目抜き通りの名称。通り沿いの繁華街タイムズスクエア周辺にある500席以上の劇場41カ所を表す代名詞でもある。新型コロナウイルス流行で2020年3月から約1年半にわたって興行を中止した。業界団体によると、18~19年シーズンの1年間の集客数は約1476万人で売り上げは18億ドル(約2660億円)以上だった。最長の公演記録は1988年1月に始まったミュージカル「オペラ座の怪人」。観客数の減少を受け、来年2月に閉演する。(ニューヨーク共同)
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アメリカ合衆国、ニューヨーク市マンハッタン島の南端を出発点に南東から北西に向けて斜めに同島を貫き、市の北限まで延びる大通りの呼称。沿道には南から北へ、金融街、市庁舎、ユニオン・スクエア、マディソン・スクエア、百貨店メーシーズ、そして「世界の交差点」タイムズ・スクエア、芸術の殿堂リンカーン・センター、コロンビア大学などがあり、ニューヨークでもっとも有名な街路の一つである。
しかしブロードウェーの名が世界的に有名なのは、劇場街としてである。劇場がブロードウェー周辺に集まりだしたのは18世紀のことで、その後南から北へというニューヨーク市の発展にあわせて徐々に劇場も北上し、20世紀初めにタイムズ・スクエア周辺に現在の大規模な劇場街ができあがった。最盛期は1920年代で、80軒ほどの劇場が林立し、夜もイルミネーションで光り輝き「ザ・グレート・ホワイト・ウェイ」とよばれ、名実ともにショービジネスの中心地となった。豪華なレビューやミュージカルが中心だが、質の高い台詞劇(せりふげき)もしばしば上演され、アメリカ演劇の中心的役割を担った。しかし第二次世界大戦後、商業主義への傾斜を強めたことから、それを批判するオフ・ブロードウェー演劇が1950年代初頭に登場し、1960年代にはさらに実験性を標榜(ひょうぼう)するオフ・オフ・ブロードウェーが登場した。また全米各地に地域演劇(リージョナル・シアター)も数多く誕生し、アメリカ演劇においてブロードウェーが占める地位は相対的に低下した。このため、過去の名作や海外の有名作品のショーケース(好見本)といわれることもあるが、ミュージカルの拠点として、また全米規模で生まれる上質な台詞劇の最終上演場所として、ブロードウェーは依然として機能し多くの観客を集めている。なお、ブロードウェーの劇場で実際にこの通りに面しているものは数少なく、多くはブロードウェーを挟む、東西は六番街から八番街、南北は41丁目から53丁目にかけて点在している。
[鳴海四郎・一ノ瀬和夫]
『大平和登著『ブロードウェイ』(1980・作品社)』▽『大平和登著『ブロードウェイ2』(1985・作品社)』▽『大平和登・荒井良雄著『ブロードウェイ!ブロードウェイ!』(1985・朝日新聞社)』▽『大平和登著『ブロードウェイの魅力』(丸善・1994)』▽『『週刊朝日百科 世界の文学42 南北アメリカⅡ――ブロードウェイと文学』(2000・朝日新聞社)』▽『P・D・ジトウィッツ著、斎藤英治訳『ブロードウェイミュージカルへの招待』(2001・英宝社)』▽『井上一馬著『ブロードウェイ・ミュージカル』(文春新書)』
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本来はアメリカ合衆国ニューヨーク市マンハッタン区を南東から北西へ走る長い通りを指すが,狭義には,この通りを東西に横切る41丁目から53丁目あたりまでの盛場,とりわけこの地域の劇場街を意味する。19世紀半ばごろからブロードウェー沿いに発達したニューヨークの劇場街は,もとは早く開けた南のグリニチ・ビレッジあたりに中心があった。しかし,両大戦間期を頂点として,映画産業に押されたためもあって劇場数が減り始め,中心も北上し狭義のブロードウェーに劇場街が残った。それでもアメリカ演劇の中心であることは変わらず,不夜城という意味で〈グレート・ホワイト・ウェーGreat White Way〉とも呼ばれる。現在ある劇場はおよそ40軒に達するが,おおむねブロードウェーそのものでなく東西の横丁にある。大部分は収容人員1000人を超す大劇場で,客席も2層ないし3層からなる。
興行は公の補助を受けずに行われる,いわゆる商業演劇の形をとり,このために,ニューヨークの商業演劇を指してブロードウェーという言葉を使うこともある。上演されるのは原則として新作であり,しかるべき作家と契約したプロデューサーが,他方で演出家や俳優とも契約し,〈エンジェルangel〉と呼ばれる出資者から金を集めて,劇場を借りるという形をとる。入りがよければ上演はいつまでも続けられ(これをロングラン・システムという),悪ければ直ちに打ち切られる。プロデューサーとしては興行の安全をはかるため,ミュージカルや軽い喜劇,有名なスターが出演しているものなど,大衆性の強い作品を取り上げることが多い。最近では,外国(とくにイギリス)や国内の地方都市で発表されて好評だった作品が上演される場合も増えており,その中には実験的傾向をもったものも少なくない。だが,製作費が著しく高騰しているために,ブロードウェーの大衆化は以前にもまして顕著になっている。アメリカの知識人にはこうしたあり方を批判する者も多く,非大衆的観客の要求にこたえて実験活動を行う場としてのオフ・ブロードウェー,それをさらに革新的にしたオフ・オフ・ブロードウェーの成立を促した。しかし,上演される作品の芸術性はともかくとして,ブロードウェー演劇の技術的水準は世界的に見てもきわめて高く,また,ニューヨークの経済に対して果たしている役割も重要である。
執筆者:喜志 哲雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
(扇田昭彦 演劇評論家 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
…ニューヨークの演劇のうち,ブロードウェーの商業演劇以外のものの総称。定員300名以下という,ブロードウェーの大劇場よりはるかに小さい劇場が活動の場であることが多く,製作費や入場料もブロードウェーより低い。…
…長期興行制度のことをいう。アメリカのブロードウェーで始められた興行方式で,一つの作品を観客動員が可能なかぎり連続して上演する。ヒットした場合には何シーズンにもわたる長期公演となることもしばしばである。…
※「ブロードウエー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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