ルメット(読み)るめっと(英語表記)Sidney Lumet

デジタル大辞泉 「ルメット」の意味・読み・例文・類語

ルメット(Sidney Lumet)

[1924~2011]米国映画監督陪審員制度を扱った「十二人の怒れる男」で長編映画デビューし、ベルリン国際映画祭金熊賞受賞。実際の銀行強盗事件に材を取った「おおかみたちの午後」や、核の恐怖を描いた「未知への飛行」など、社会問題を題材にした作品を数多く手がけた。他の監督作に「セルピコ」「ネットワーク」「オリエント急行殺人事件」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ルメット」の意味・わかりやすい解説

ルメット
るめっと
Sidney Lumet
(1924―2011)

アメリカの映画監督。フィラデルフィアに生まれる。長らく演劇に携わったあと、1950年にCBSテレビディレクターとなる。1957年映画監督に転じ、殺人事件を裁く陪審員たちの緊迫したディスカッションドラマ『十二人の怒れる男』で衝撃的なデビューを飾る。以後、社会性の強い都会ドラマや舞台劇の映画化を多く手がけ、ニューヨーク派、知性派の代表とみなされるようになった。『夜への長い旅路』(1962)、『質屋』(1964)、『狼(おおかみ)たちの午後』(1975)、『ネットワーク』(1976)、『エクウス』(1977)、『評決』(1982)などの作品がある。

[宮本高晴]

資料 監督作品一覧

十二人の怒れる男 12 Angry Man(1957)
女優志願 Stage Struck(1958)
私はそんな女 That Kind of Woman(1959)
蛇皮の服を着た男 The Fugitive Kind(1960)
橋からの眺め A View from the Bridge(1962)
夜への長い旅路 Long Day's Journey into Night(1962)
質屋 The Pawnbroker(1964)
未知への飛行 Fail-Safe(1964)
丘 The Hill(1965)
グループ The Group(1966)
恐怖との遭遇 The Deadly Affair(1966)
グッバイ・ヒーロー Bye Bye Braverman(1968)
約束 The Appointment(1969)
はるかなる南部 Last of the Mobile Hot Shots(1970)
ショーン・コネリー 盗聴作戦 The Anderson Tapes(1971)
怒りの刑事 The Offence(1972)
セルピコ Serpico(1973)
オリエント急行殺人事件 Murder on the Orient Express(1974)
狼たちの午後 Dog Day Afternoon(1975)
ネットワーク Network(1976)
エクウス Equus(1977)
ウィズ The Wiz(1978)
プリンス・オブ・シティ Prince of the City(1981)
デストラップ 死の罠 Death Trap(1982)
評決 The Verdict(1982)
ガルボトーク 夢のつづきは夢… Garbo Talks(1984)
キングの報酬 Power(1986)
モーニングアフター The Morning After(1986)
旅立ちの時 Running on Empty(1988)
ファミリービジネス Family Business(1989)
Q&A Q&A(1990)
刑事エデン 追跡者 A Stranger among Us(1992)
ギルティ 罪深き罪 Gulty as Sin(1993)
NY検事局 Night Falls on Manhattan(1996)
グロリア Gloria(1999)
コネクション マフィアたちの法廷 Find Me Guilty(2006)
その土曜日、7時58分 Before the Devil Knows You're Dead(2007)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ルメット」の意味・わかりやすい解説

ルメット
Lumet, Sidney

[生]1924.6.25. ペンシルバニア,フィラデルフィア
[没]2011.4.9. ニューヨーク,ニューヨーク
アメリカ合衆国の映画監督,テレビドラマ・舞台演出家。心理ドラマを得意とし,20世紀後半のアメリカにおける最も偉大な映画監督の一人。ユダヤ系俳優の息子として生まれ,ニューヨークのイディシュ語演劇の舞台で子役としてデビュー。1930年代後半はブロードウェーの舞台に出演した。第2次世界大戦中の兵役を経たのち,芝居の演出を手がけるようになり,1950年テレビドラマの演出家として CBSに入社。1950年代のアメリカのドラマ界で最も有能な演出家の一人に数えられた。映画初監督作品となった『十二人の怒れる男』Twelve Angry Men(1957)では,都会の喧騒,犯罪,複雑な心理的葛藤など,その後の作品で描き続けるテーマへの強いこだわりを示している。『蛇皮の服を着た男』The Fugitive Kind(1960),『未知への飛行』Fail Safe(1964)などの作品で心理ドラマの巨匠としての地位を確立。1960年代後半は軽いドラマ作品も手がけたが,その後は『セルピコ』Serpico(1973),『狼たちの午後』Dog Day Afternoon(1975)など,都会を舞台にした緊迫感あふれる作品に回帰した。テレビの商業主義をみごとに風刺した『ネットワーク』Network(1976)は代表作の一つ。2004年アカデミー賞名誉賞を受賞した。

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百科事典マイペディア 「ルメット」の意味・わかりやすい解説

ルメット

米国の映画監督。ペンシルベニア州生れ。俳優,テレビ演出を経て映画監督となる。12人の陪審員が殺人事件の評決を下すまでの経過を描いたデビュー作《十二人の怒れる男》(1957年)で高い評価を得る。主な作品に,核戦争の恐怖を描いた近未来映画《未知への飛行》(1964年),A.クリスティー原作の《オリエント急行殺人事件》(1974年),銀行強盗を描いた《狼たちの午後》(1975年),ブロードウェーの舞台を映画化した《デストラップ・死の罠》(1982年),法廷劇《評決》(1982年),スリラー映画《モーニング・アフター》(1986年)などがある。リアリズムの手法で,社会性と娯楽性を巧みに統合する演出に特徴がある。
→関連項目バコール

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