ベラ(海水魚)(読み)べら(英語表記)wrasses

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベラ(海水魚)」の意味・わかりやすい解説

ベラ(海水魚)
べら / 倍良
wrasses
rainbowfishes

硬骨魚綱スズキ目ベラ科の海水魚の総称。日本沿岸には北海道南部から南西諸島にかけて4亜科126種が知られている。そのほとんどが熱帯性で、各種のベラがみられるのは南西諸島と小笠原(おがさわら)諸島に限られるが、イラ、コブダイニシキベラササノハベラ、ホンベラ、キュウセンテンスなどの数種は温帯の環境に適応し、本州沿岸でも繁殖している。

 体は一般に細長くて側扁(そくへん)している。近縁のブダイ類とは異なり口を伸出させることができ、多くは強い歯をもつ。シロクラベラ、コブダイ、メガネモチノウオなどのように1メートルを超える大形種もあるが、ほとんどは全長30センチメートルぐらいまでの小形魚で、鮮やかな色彩のものが多く、観賞魚として喜ばれる。

 タキベラ亜科とモチノウオ亜科の数種を除きすべて浅海性で、岩礁サンゴ礁、またはその周辺の砂泥底にすみ、小形の底生動物を主食するものが多い。ベラ類は典型的な昼行性の魚で、夜は海底の砂の中、岩陰、海藻の根元などに隠れて眠る。危険を感じたときも、すばやくそのような場所に身を潜める。また、温帯に適応した種類は、低温期には砂の中に潜って冬眠する。産卵期は夏が中心で、卵は分離浮遊性である。

 ベラ類は雌性先熟の性転換をする魚としても有名で、まず雌として機能し、その一部はやがて雄の機能をもつようになる。また、老・幼魚によっても、体色や体形が著しく変化するため、従来は本来同一種の雌雄または老成魚や幼魚が別種にされていたものが少なくなかった。食用としてのベラ類は、キュウセンなど2、3種を除いては不味で、漁獲量も少なく、食品としての価値は低い。

[荒賀忠一]

料理

白身で肉が柔らかい。煮魚は、さっと焼いてから煮つけると身がしまる。揚げて南蛮漬けマリネにしてもよい。焼いたものを干し、麺(めん)類、鍋物(なべもの)のだしにも使う。よいだしが出る。

河野友美


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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