日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベンダース」の意味・わかりやすい解説
ベンダース
べんだーす
Wim Wenders
(1945― )
ドイツの映画監督。デュッセルドルフに生まれる。若いころから映画に興味を抱き、ミュンヘン映画大学に入学、在学中は映画やロック音楽の批評にも健筆を振るう。1971年に『ゴールキーパーの不安』で監督として本格的にデビューし注目を浴びた。『都会のアリス』(1973)、『まわり道』(1975)、『さすらい』(1976)のロード・ムービー三部作によって、旅をテーマにした独自の世界を映像化してニュー・ジャーマン・シネマの旗手の一人となった。以後、『アメリカの友人』(1977)で国際的に評価され、アメリカで撮った『ハメット』(1982)をはじめ、『ことの次第』(1982)、『パリ、テキサス』(1984)など注目作を発表したのち、『ベルリン・天使の詩』(1987)で名実ともに世界の巨匠となった。
その後も、近未来を描いた『夢の涯(は)てまでも』(1991)、『時の翼にのって ファラウェイ・ソー・クロース!』(1993)、『リスボン物語』(1995)など多彩に活躍し、1990年代後半からは『エンド・オブ・バイオレンス』(1997)、『ミリオンダラー・ホテル』(2000)、『ランド・オブ・プレンティ』(2004)、『アメリカ、家族のいる風景』(2005)と、アメリカを舞台にした作品を発表した。その一方、『東京画』(1985)、『都市とモードのビデオノート』(1989)など優れたドキュメンタリーを撮り、キューバ音楽を描いた『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』(1999)は高い評価を受けた。また舞踏家ピナ・バウシュを描いた『PINA ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』(2010)では3Dに取り組み、精力的に創作活動を続けている。
[村山匡一郎]
『梅本洋一・鈴木圭介・山下千恵子編・構成『天使のまなざし ヴィム・ヴェンダース、映画を語る』(1988・フィルムアート社)』▽『ヴィム・ヴェンダース著、梅本洋一訳『東京画旅日記』(1989・ダゲレオ出版)』▽『ヴィム・ヴェンダース著、三宅晶子・瀬川裕司訳『映像(イメージ)の論理』(1992・河出書房新社)』▽『ヴィム・ヴェンダース著、松浦寿輝訳『エモーション・ピクチャーズ』(1992・河出書房新社)』▽『ラインホルト・ラオ著、瀬川裕司・新野守広訳『ヴィム・ヴェンダース』(1992・平凡社)』▽『ヴィム・ヴェンダース著、瀬川裕司訳『夢の視線』(1994・河出書房新社)』▽『ヴィム・ヴェンダース著、宮下誠訳『かつて…』(1994・PARCO出版)』▽『ヴィム・ヴェンダース著、池田信雄・武村知子訳『「愛のめぐりあい」撮影日誌――アントニオーニの時間』(1996・キネマ旬報社)』▽『青山真治責任編集『フィルム・メーカーズ11 ヴィム・ヴェンダース』(2000・キネマ旬報社)』▽『遠山純生編『E/Mブックス1 ヴィム・ヴェンダース』全面改訂新版(2002・エスクァイアマガジンジャパン)』