ベンチャーキャピタル(読み)べんちゃーきゃぴたる(その他表記)venture capital

翻訳|venture capital

デジタル大辞泉 「ベンチャーキャピタル」の意味・読み・例文・類語

ベンチャー‐キャピタル(venture capital)

ベンチャービジネスが発行する株式への投資などによって資金を提供する企業または機関。株式の上場による値上がり益を主たる収益源とする。VC

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベンチャーキャピタル」の意味・わかりやすい解説

ベンチャー・キャピタル
べんちゃーきゃぴたる
venture capital

ベンチャー・ビジネス(研究開発型と、すきま産業型の新規企業)に投資・融資を行い、その創業と成長を促進する専門投資会社。機関投資家等から資金を集めてファンドを組成し、ベンチャー・ビジネスに投資するとともに、経営支援を行い企業価値を高める。投資先の企業が株式を公開・上場することで得られるキャピタル・ゲインおよび、ファンドに出資している機関投資家から得るファンド管理手数料がベンチャー・キャピタルの収益となるのが一般的である。アメリカでは1960年代末から、日本では1970年代になって登場してきた。

 第一次石油危機前の第一次ベンチャー・キャピタルブーム期には、大企業・大手商社によるベンチャー・キャピタルへの融資が中心で、資本支配の意図が先行していたが、1980年代前半の第二次ブームにおいては、ベンチャー・ビジネスの育成・買収によって事業拡大のスピードを上げようとする傾向が主流となっていた。ベンチャー・ビジネスへの投資・融資はリスクが大きいため、一般の銀行や証券会社は投資しにくい。このため、専門の投資会社がつくられ、日本では1980年(昭和55)8月の13社から1985年1月には63社と急増し、1992年(平成4)には120社を超した。銀行・証券系の合資によるものが過半を占め、外資系、独立系(個人資産家・調査機関など)の比率はまだ小さかった。このなかには、「日本合同ファイナンス」(現、ジャフコグループ)のように、内外の投資家から資金を集め、投資事業組合をつくり、多くのベンチャー・ビジネスに出資している例もみられる。1980年代から1990年代初めは、ベンチャー・キャピタルは株式公開が間近に見込まれる企業への投資・融資を行うものが主流であったが、リスクの大きいスタートアップ企業に投資・融資し、投資先企業へのコンサルティング業務を積極的に行い、企業価値を高めてキャピタル・ゲインを得るハンズオン・タイプ(経営関与型)が徐々に増加してきた。

 1990年代なかばから、すきま産業型企業や情報・エレクトロニクス企業向けの投資が進み、第三次ブームを迎えたが、アメリカに比べ、実際の創業や株式の公開数は少なく、ベンチャー・キャピタルも期待された役割を果たしているものは少ない。日本ではまだ投資ではなく融資形態にとどまるものが多く、アメリカのようにキャピタル・ゲインやエグジットオプション(他社に売却して売却益を得る)をねらうベンチャー・キャピタル本来の存立基盤が十分に確立していないのである。店頭株式市場とM&A(企業の合併・買収)市場の拡大が社会的に容認されることに加えて、個人投資家や年金基金など新しい投資家を引きつけることも必要である。しかし一方では、日本のベンチャー・キャピタルによる急成長中のアジアの非上場企業に対する投資(資本参加)が本格化している。従来の工場進出や上場株式の購入とは少し違うため、現地では「企業の買いあさり」という批判も聞かれる。

 一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター発行の『ベンチャー白書2021』によれば、日本におけるベンチャー・キャピタルの投資実績は、2020年(令和2)4月~2021年3月で、投資件数が1448件、投資額が2243億円である。一方、2020年1月~12月におけるアメリカ合衆国のベンチャー・キャピタルの投資実績は1万2254件、1562億ドル(約16兆6800億円)となっており、日本はアメリカと比べてベンチャー・ビジネスへの資金供給がかなり少ない。さらに近年では中国のベンチャー・キャピタルによる投資が増加しており、2020年の投資実績は3155件、1953億元(約3兆0200億円)と、日本を上回っている。

[鹿住倫世 2022年12月12日]

『浜田康行著『日本のベンチャーキャピタル――未来への戦略投資』新版(1998・日本経済新聞社)』『一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター『ベンチャー白書2021』(2022)』

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知恵蔵 「ベンチャーキャピタル」の解説

ベンチャーキャピタル

同じファイナンスをつける場合でも、ベンチャー企業と中小企業とでは、その性格上、手法が違ってくる。一定の規模と社会的評価が備わった中小企業には成長性より安定性が重要で、資金調達には間接金融が適している。一方、ベンチャービジネスは経営体としては未熟ながら、将来有望な技術、ノウハウ、ソフトを持っているので、リスクが大きいものの急成長が見込める。よって、株式公開やM&A(合併・買収)で資金を回収する直接金融が望ましい。そうしたニーズに応えた、成長の可能性が高いベンチャービジネスに対する投資を主な業務とする企業を、ベンチャーキャピタル(VC)といい、投資先のベンチャービジネスが成功し、株式を公開して得られるキャピタルゲイン(有価証券売却益)を主な収益源とする。

(竹内文則 富士常葉大学教授 / 森岡英樹 金融ジャーナリスト パラゲイト・コンサルタンツシニア・リサーチ・アソシエイツ / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

ASCII.jpデジタル用語辞典 「ベンチャーキャピタル」の解説

ベンチャーキャピタル

「Venture Business=ベンチャー事業」に、「Capital=資本」を供給することを主たる業務とする組織・会社を指す。一般的に創業まもないベンチャー事業においては、担保力が不十分で銀行融資等では満足のいく資金調達ができないが、資金提供する資本家・通称エンジェルに対して、その種の新興企業を株式公開に導き、将来的に利益を供与できることを説明、資本の提供をしてもらう。また、上場によってその種の企業の資産価値を上昇させることを目的としている。そこで「ベンチャーキャピタル」からの資本導入は有力な資金調達手段となってきている。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ベンチャーキャピタル」の意味・わかりやすい解説

ベンチャー・キャピタル
venture capital

有望なベンチャー・ビジネスに対して投資を行なう企業。主として設立段階から株式公開に至るまでの期間に投資し,場合によってはさまざまな経営サービスを提供する。設立・初期段階のベンチャー・ビジネスへの投資は大きなリスクを伴うので,投資に当たってはリスクをカバーするだけのリターンを得られるように,キャピタル・ゲインが期待できる形態,たとえば普通株・劣後転換社債・ワラント付社債の私募という形態をとることが多い。日本では 1963年,中小企業投資育成会社法に基づいて,特殊法人の中小企業投資育成会社が東京・名古屋・大阪に設立された。

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百科事典マイペディア 「ベンチャーキャピタル」の意味・わかりやすい解説

ベンチャー・キャピタル

資金調達能力はないが成長の見込まれる企業に,主に株式保有の形で資金を提供する団体や個人,もしくは提供された資金そのもののこと。資金提供した企業や個人は,提供先の企業の株式公開の際,株式を売却して利益をあげることが多い。銀行系や証券系だけでなく,最近は一般の事業会社やコンサルタント会社なども,ベンチャー・キャピタルになるケースが増えている。
→関連項目ベンチャー・ビジネス

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株式公開用語辞典 「ベンチャーキャピタル」の解説

ベンチャーキャピタル

新しい技術や独創的なアイデアで市場を切り開こうとする新興企業(ベンチャー企業)に資金を提供する機関。独自の基準で新興企業の将来性を評価し、株式の取得を通じて資金面で事業拡大をサポートする一方で、数年後株式市場に上場した際には値上がり益を取ることを目的としている。成功すれば多額の値上がり益を享受できる一方で、投資先企業の中には上場にいたらず投下資金の回収が不可能になるケースも多く、投資先選定にあたっては高度の専門性が要求される。

出典 株式公開支援専門会社(株)イーコンサルタント株式公開用語辞典について 情報

産学連携キーワード辞典 「ベンチャーキャピタル」の解説

ベンチャーキャピタル

「ベンチャーキャピタル」とはベンチャー企業への投資を専門的に行う投資会社。株式未上場、未登録の創業間もないベンチャー企業に出資(株式の取得)し、その企業の事業が成功し、株式公開した際に得られる利益(キャピタルゲイン)を収入としている。経済産業省が開設した大学発ベンチャー支援サイト(http://dnd.rieti.go.jp/)でも、資金調達の分野で「ベンチャーキャピタル」の参加が見受けられる。

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会計用語キーワード辞典 「ベンチャーキャピタル」の解説

ベンチャーキャピタル

公開していないベンチャー企業等に出資する投資会社のことです。

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M&A用語集 「ベンチャーキャピタル」の解説

ベンチャーキャピタル

未公開のベンチャー企業等に出資する投資会社のこと。

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世界大百科事典(旧版)内のベンチャーキャピタルの言及

【ベンチャー・ビジネス】より

…マイクロ・エレクトロニクスやバイオテクノロジーなど技術革新の波に乗って登場しているのであり,アップル・コンピューター,ジェネンテックなど急成長企業も少なくない。 アメリカではこうした企業に投資するベンチャー・キャピタルventure capitalが数多く存在している。ベンチャー・キャピタルは〈企業を開発する企業〉であり,投資先企業を成長させ,株式を店頭市場で公開させる。…

※「ベンチャーキャピタル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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